どうぞよろしく ページ6
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9月といえどもまだ夏真っ盛りで、アスファルトは空気を揺らして熱を放出している。
太陽から逃げるように木の影を探してフラフラと歩きながら、セミの鳴き声や住宅街の生活の音に耳をすませていると、全てを遮って彼からメッセージが届いたことを知らせる電子音が響いた。
renあと10分くらいで着く
これはいけないと、のんびり歩いていた足を早めて駅に向かう。
『やほ』
「おー制服以外のスカート初やな」
『そう?付き合った日もワンピだったよ』
「ああ、あれな。馬子にも衣装な」
『…………』
「はいはい、不機嫌な顔もかわいいでー」
『私なんでこいつと付き合ったんだろ…』
挨拶がてらの言い合いをして、二人で並んで歩き出す。
特に行く場所もなく、2人して早く涼しい場所に逃げ込みたくて自然とショッピングモールへ足を向けていた。
休日のショッピングモールなんて人が多いだけだと分かっているが、永瀬と一緒にいれるならどこでもいいやと、隣で暑い暑いと顔を扇ぐ彼の顔を見上げた。
昼食も適当に済ませてドリンク片手に店を回っていると、前方に制服を着た集団が見えた。
確かあれはここから4駅先にある女子校だ。
制服が可愛くて有名で、お嬢様からやんちゃな子まで幅広く通っている私立校。
もちろん私も受験したが、そんなミーハーな気持ちで学校を決めちゃダメと紫耀くんに一喝されて今の高校を選んだ。
しかし、あの学校に行っていたら永瀬と付き合うこともなかっただろうし、今になって考えると紫耀くんと姉のことがなかったら永瀬とここまで仲良くなってなかっただろうし、付き合えたのも紫耀くんのおかげなのだろう。
「あ!廉くんだ!!」
「え、嘘うそ」
「れーん!!」
ぼんやりと可愛らしい制服を見ていると、その集団がこちらに向かって手を振っていた。
彼女たちは聞き慣れた名前を呼んでいるし、隣で永瀬は低い声で うわー、なんて言っているし、今からあの可愛い集団に彼が囲まれるのは目に見えていた。
『私は気にしないでいいから行っておいでよ』
「ん〜…」
『ほら、みんなこっち来てるよ!私お店まわってるから!』
「いや、Aもおって」
いつもお前お前言うくせに、こんな時だけ名前で呼ぶところが本当にずるいんだ。
多分だけど、私は今から好奇の目に晒されるし、もしかしたら嫌味でも言われるかもしれないけれど、彼のそんなずるさに負けてしまう。
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名無し - 一気読みしました!主様のペースで良いので更新待ってます (2020年12月12日 21時) (レス) id: 492fd25da1 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ(プロフ) - あこさん» お返事遅くなってすみません!少し生活面が落ち着いてきたので、これから更新できればと思います!少々お待ち下さい(^^) (2020年3月11日 18時) (レス) id: 1c0a7a2bdd (このIDを非表示/違反報告)
あこ(プロフ) - めちゃめちゃ続き気になります!更新楽しみにしてます! (2020年1月5日 2時) (レス) id: 105c11924c (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ(プロフ) - 愛美さん» コメントも評価もありがとうございます。嬉しいお言葉ばかりで私がニヤニヤしてしまいました…!番外編のくせに長々と続いておりますが、もう少し書きたいので、これからもよろしくお願いします! (2019年12月15日 21時) (レス) id: 1c0a7a2bdd (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ(プロフ) - しおりさん» ありがとうございます!ノロノロ更新ですが、これからもお付き合いお願いします! (2019年12月15日 21時) (レス) id: 1c0a7a2bdd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぴこ | 作成日時:2019年7月25日 0時