失恋14回目 ページ14
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今日も失恋しましたと麻里に報告して1日が始まる。
そんな日常が過ぎていった。
サッカー部の頑張りもあり麻里と神宮寺くんはいい感じらしく、麻里から聞くきゅんきゅんする話で、私も青春していた。
時々岸くんや岩橋くんとも話すようになったし、永瀬くんに至っては一日一回会話をする仲になった。
麻里と神宮寺くんをくっつける手伝いをしてほしいと言われた時は、麻里のためならなんでもすると意気込んでいた私だが、彼らが求めていたものは麻里の情報らしく、私は専ら情報屋と化していた。
「石井が最近気になってる店とかある?」
『駅の裏のパン屋のシュークリーム』
こんな1ラリーを一日一回永瀬と交わす。
神宮寺くんと同じクラスの永瀬くんが、あちらでは情報屋の役割を担っているようだった。
たった数秒の会話でも毎日彼と話していると、サッカー部のファンの女の子たちから彼らとの関係を尋ねられることが増えた。
柔らかな表情と声にそぐわない目の奥の鋭さに気づかないふりをしながら、廉くんとどういう関係なの?と可愛く聞いてくる彼女たちに、永瀬くんとは何もありません、と伝えると、みんな軽い足取りで私の元から去っていく。
そういうことが続いて気づいたことだが、どうやら永瀬くんだけでなく、彼らのことを苗字で呼んでいるのは私だけのようだった。
あ、岸くんは岸くんだけど。
モテるっていうのも大変だな〜と同情しながらも感心する。
麻里の恋が進むのと並行して、姉と先生の恋も発展していた。
最近 家に帰って目にとまるのは、結婚式場やドレス、引き出物のカタログたち。
大学4年の二人は卒業と同時に入籍し、式も挙げるらしい。
4月に先生がうちに住むようになって、早3ヶ月。季節はもう夏になる。
3ヶ月も毎日失恋していたから慣れたのか、それとも学校で会話する男友達が出来たからなのか、はたまた本当に麻里の恋で擬似青春しているからなのか、先生と姉の幸せな光景を見ることも日常の1シーンとして消化出来るようになってきた。
2年前初恋をした夏。
1年前失恋をした夏。
どうか今年は平和な夏を切に願います。
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作者名:ぱぴこ | 作成日時:2019年5月30日 22時