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グラウンド38回目 ページ38

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うちの学校はマンモス校で、グラウンドではサッカーと野球の両方の試合が同時に出来てしまう広さがある。
体育の時間にちんまりとスペースを使うことしかしてこなかった私は、初めて見る放課後のグラウンドに圧倒されていた。



放課後と言ってもまだ16時で、ジリジリと照りつける太陽の下でたくさんの部活生が砂埃を巻き上げながら汗を拭う姿は、今まで狭い世界を選んできた私を叱りつけるようだ。

私はいったい何をしてたんだろう。
こんなにみんな努力して、輝いて、青春して…
まだ間に合うだろうか。
私も前に進めるだろうか。





そんな若干の焦りを感じていると、後ろから私を呼ぶ声がした。






「あれ?Aちゃん?」

『岸くんおつかれ。今日サッカー部見にきたの。なんの練習するの?』

「そうなんだ!
今日は基礎練したあと各々筋トレだったり作戦立てだったり割と自由な感じ。
弱いところ固めていく的な!」




相変わらず岸くんは笑顔で優しく接してくれる。
普段の制服姿でもイケメンなのに、こうしてユニフォームを着て部活に勤しむ姿には何倍もの格好良さがある。
なるほど、これはこの学校だけでなく他校にファンクラブが出来るのも頷ける。


麻里も麻里で、部員の状態を記録したりメニューを伝えたり、備品の整理や 顧問と部員のフォローなど、マネージャーの仕事をしっかりこなしていてかっこいい。


神宮寺くん、自慢の彼女だろうな〜








そんなことを考えていると、岸くんがみんなを連れてきた。


「Aちゃんが来るなんて珍しい!」
「なになに?マネージャーしてくれるの?」


高橋くんと岩橋くんは、ユニフォームを着ててもかわいさは健在だ。
こんなに可愛くても、きっと試合になるとカッコよくて、そのギャップに女の子たちはやられるのだろう。


『永瀬くんいる?返したいものあるんだけど』

「あ〜〜、廉ね…今端っこで一人でドリブル練習してる。ほら。」



神宮寺くんに差された方を見ると、広いグラウンドの一番隅で、ボールを蹴る彼の姿があった。








誰だあれは。

どう見てもエースじゃない。









初めて見た サッカーをする彼は、楽しさとはかけ離れた苦しい背中で、下手くそなドリブルを続けていた。


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作者名:ぱぴこ | 作成日時:2019年5月30日 22時

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