９色の怪異譚《狂鬼編》 (ページ9)

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其の玖【流血表現注意】ページ9

あの後、文乃先輩は少しやることがある、と言って森の方に出て行ってしまったので、今僕は１人で小屋の中に入ることにした。…否、入ろうとした。
いやこの小屋こっっわ！
少し風が吹いただけでギギッ…と鳴るこの小屋は、遠目からでもわかるほどボロボロで、少し埃っぽい臭いもする。
あー入りたくないー…
しかし時間が経つにつれて頭の痛みや吐き気は強くなっていく。
これをさっさと終わらせるためには、これを乗り越えなければいけないんだ…！
そう思って勇気を振り絞り、扉を開けて中に入った。

「…お、お邪魔しますぅ…」

誰もいないのはわかっているんだけど、なんとなく言ってしまった。
小屋の中は暗くて目をよく凝らさないと見えない。
…というか、結局僕は何をすれば…？
そう思いつつキョロキョロと周りを見渡すと、奥の方で金属のような、高い音が聞こえた。

…チリン…チリン…チリン…

鈴の音だわこれ

なんでなんでなんでなんで⁈なんでこんな無人の小屋の中で鈴の音が聞こえんの⁈
おかしいよね⁈だって普通祠とか寺の中に鈴おかないもんね⁈

恐怖を覚えた僕は、先程文乃先輩にお借りしたナイフを覚束ない手つきで構えた。

次第に近づいてくる音が怖くて仕方ない。
けど…やるしかない！
そう決意した瞬間、音がかなり近くなった。
目を凝らしてみると、もうすぐそこに女が立っていた。あの写真で見たのと同じ格好をした女。
橙の着物を着ており、裾を引き摺り、鈴のついた簪を刺していて、目は紅く、口が極限まで裂けた、化け物と呼ぶのに相応しい出で立ちの女。
写真では後ろ姿だけだったけど、正面からみると更に恐怖心を煽ってくる。

「…あ、あんたが狂鬼っすか…!?っか、かかってこいよっ…！」

そう言った瞬間、女は裂けた口を更に歪ませて、ケタケタと笑い、こちらに寄ってきた。
…気付けばもう、目の前にいた。

「…ッ！」

僕は握りしめたナイフを精一杯振りかぶって__

ザシュッ、という音が響き、紅い飛沫が舞った。

僕の腕から。