其の壱 ページ1
僕、
今日は本殿の見回りと社務所の鍵閉めの当番で、帰れる頃には空はいつもよりも暗く、寒さも増していた。
今はその寒さと鍵閉めの当番、という面倒な役回りに対するやり場のない怒りを、着替えつつ1人、零しているところである。
「うぅ〜…さっむ…!なんでこんなに袴って寒いの…!ってかなんでこの部屋暖房付いてないの…!社務所の職員さんだけ狡い…」
いや、マジでクッソ寒いんだよ?真冬の神社の職員室。
袴だし。
高校の友人でありながらここの神社の巫女さんでもある文乃先輩ともよく愚痴っていた。
それにこの神社、結構古いからら雨漏りなんてしょっちゅうあるし、階段も急でかなり軋む。階段の辺りなんかは蛍光灯の交換がされてなくてかなり暗く、スマホが必須。
まぁその分時給良いから辞められないのだけど。
…そんな事を考えていたら着替え終わって、あとはもうここを出て鍵をかけるだけになった。
今日はよく頑張ったし、自分へのご褒美に帰りにコンビニで肉まんでも買って帰ろうかな、なんて考えて廊下を進む。
その廊下の突き当たりにある、凄く軋む角度の急な階段をスマホ片手に下りて…最後の段から、右足を踏み出そうとした時。
ぴちゃっ…
まるで水に触れたような感触、音。
一階の廊下全体が、水浸しになっていた。
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作者名:葉千巻 | 作成日時:2019年12月23日 0時