Feather (ページ14)

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逃げるページ14

「俺怒ってるんだけど」

廊下でむすっと肩頬を膨らませながら腕を組んで私を見る京本くん。胸に抱えた教科書とノートをぎゅうと握りしめる私。そして、それを見て通り過ぎていく人たち。

なんでこうなってるのかは今朝に遡る。

京本くんとは朝に下駄箱で会う事が多い。
「おはよ」って話しかけてきてくれる京本くんに、「おはよう」と躊躇いがちに返事をするのはいつもの事。

…ただ、今日はタイミングが悪かった。

京本くんにご執心の学校一のマドンナである佐藤さんが、今日はそこに居合わせていた。
彼女は取り巻きの女の子たちを連れていつも中心にいる。今朝も三人の女の子と肩を並べて、綺麗な顔に笑顔を浮かべて「おはよう」と先に京本くんに話しかけた。のに、京本くんは「うん」とだけ答えて私におはよと話しかけたのだ。

多分、それが良くなかった。

返事をした私を睨む彼女たちの視線があまりにも強烈で、穏やかに今日一日を乗り越えられる自信もなくて。
京本くんが続けて何かを言ったのを遮って私は逃げるようにして教室まで走った。

同じクラスの佐藤さんは案の定さっきの授業中では先生の目を盗んでこちらを振り返り睨んでいたし、何かを言われる前に逃げるようにして授業が終わる度に一目散に教室を出る。
実は斜め前の席の京本くんもさすがに授業中は話しかけてこない。
時折視線は感じるけれど、気づかないふりを続けた。

続けたけど、５時限目が終わり移動教室から戻る時に京本くんに腕を掴まれてしまった。
それが今だ。

「なんで逃げるの。俺嫌がられるようなこと何かした？」
「違う…」
「ならいいんだけど…でも避けてるのは事実でしょ？」
「…ごめんなさい」
「…俺はね、Aちゃんに謝ってほしいんじゃない。仲良くなりたいって思ってる。なんでか分かる？」

いきなりクイズを出されて鳩が豆鉄砲を喰らったような顔になる。