仲良くしたい ページ15
「ごめんね、分からないや…」
京本くんが私と仲良くなりたい理由は分からない。
ただでさえ一軍の京本くんと三軍の私じゃ差がありすぎるのに、仮に私が得をすることがあったとしても京本くんが私と仲良くして得をすることなんか何一つない。
そもそも私は京本くんに話しかけてもらえるような出来た人間じゃない。
落ちこぼれの私なんかが、話してていい人じゃない。
俯いたままの私の上で京本くんが少し笑った気がして顔をあげたら、京本くんは綺麗な微笑みを浮かべながら口を開く。
「Aちゃんのそういう表情見てるとほっとけないんだ」
「…そういう表情?」
「うん。怯えてるっていうか、自信なさげに俯いてたり、困ってても全部一人でやっちゃうし、基本的に一人でいることが多いから。なんだろう…なんていうか、目が離せないんだよね」
「…う、うん…そうなんだ」
「だからね、俺は仲良くしたいの。前にマシュマロあげた時みたいに、ああいう笑った顔がもっと見たいなって思ってる。まあこれは俺のわがままなんだけどね」
ふにゃりと笑う京本くんに、私はただただ戸惑うばかり。
京本くんは損得で物事を見る人じゃないことは最初から分かってた。
でも、ここまで真っ直ぐに気持ちを伝えられるとどんな顔をしたらいいのか分からない。
恥ずかしい、とは少し違う。
なんだろう…けど、嬉しい。
「…あの、」
「うん?」
「ありがとう」
「え、ありがとうなの?」
「ありがとう、だよ。嬉しいから」
そう言って少しだけ笑ったら、不思議そうに目を丸くしていた京本くんがみるみるうちに微笑んでくれて嬉しかった。
初めてこの学校で友達が出来た。そんな感覚。
「じゃあ明日からたくさん話しかけてきてね
」
「えっ…それはちょっと…」
「なんで?友達でしょ?」
「そうだけど!そうなんだけど…!」
「樹にはもう少し砕けた感じなのに、俺にまだ壁がある感じがちょっとやだ。だからたくさん話しかけてきて。OK?ありがとう!」
「ちょ、待っ……京本くん!?」
勝手に自己完結してるんるんと効果音がつくくらい跳ねて行ってしまう京本くんを慌てて追いかける。
「三軍のくせに」っていつもの言葉が聞こえたけど、この瞬間だけはそんなのどうだって良かった。
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作者名:りく | 作成日時:2021年9月24日 17時