【銀魂】エ ン ヴ ィ ー 彼 氏

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『貸せ』



そう言って、Aの手から下駄を受け取り、財布から五円玉を取り出した。


彼女にハンカチか何かないかと聞いて、Aはシンスケに手拭いを差し出す。そのまま器用に、彼女の鼻緒を直していった。




『凄い！ 晋助！』




「履けるよ」と嬉しそうに跳ねまわり、シンスケの首に腕を回して飛びつく。シンスケはそれを簡単にあしらい、彼女の頭にポンポンと数回手を置いた。



不意に俺の方を見たシンスケは、片方の口角を上げる。その姿にムカついて、胸の中でそっと舌打ちを漏らす。


しかし、シンスケはこの後待ち合わせがあるとか言って、俺たちから離れた。




『万斉くんたちと遊ぶのかな？』




そう俺の方を見上げ、小首を傾げる。
俺には、シンスケがチャンスをくれたのかと思ってしまった。


そんな器用なことをする男だとは思ってなかったし、分かりにくいからやはり彼奴は不器用だ。



しかし、なかなか行動を起こすことが出来ない俺は、ただAの横を歩きながら祭囃子を聞く。

ピーヒャラピーヒャラ、時折彼女の会話が聞こえなくなるため、鬱陶しいったらありゃしない。




でも俺の話が聞こえなくて、顔を近づけてくるAに、胸が動いてしまう。俺も聞き返すフリをして、Aの口元に耳を寄せた




しばらくそうして歩いているが、彼女の表情が強張っていくのが分かる。

どうしたのかと思い足を止めて下を見れば、Aの指の間は赤く染まっていた。

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