【銀魂】エ ン ヴ ィ ー 彼 氏

彼氏:高杉晋助 友情出演:沖田総悟 ページ35

彼氏:高杉晋助
友情出演:沖田総悟




『あれ、銀魂高校の王子、沖田くんじゃん』



屋上の重たい扉が金属の擦れ合う音を立てながら開く。そこから顔を覗かせた女は、「こんちゃーす」と遠慮も無く俺の隣に座った。


同じクラスではないが、学年でこの女の存在を知らない奴は居ないだろう。しかし、この女が単に派手で目立つだけではない。問題は、こいつの彼氏である。



『いやさぁ、学校で晋助と待ち合わせしてるんだけど、アイツ何処にも居なくて〜』



そう愚痴を零してはブレザーのポケットからグラスを取り出す。携帯を鏡代わりに使っては、真っ赤で妖艶に色づけた。



『あ、晋助って私の彼氏なんだけど』

『知ってやすよ。高杉晋助でしょ？』

『あれ、意外とアイツ有名人なんだ』



「全然学校来てないのに」となにも面白いことなど言ってもいないのにケタケタと笑う。下品ではなく、まるで誘惑する小悪魔のように笑っている。

そんなコイツを思わず凝視していれば、「なにかついてる？」と小首を傾げた。



『……別に』

『そ。なら良いんだけど』



「これからデートだからさ」と今度は髪を整え始める。サバサバしているように見えて、やはり好きな男の前では可愛くいたいとはギャップがあるではないか。


ふうん、と胸の中で頷いていれば、髪を軽く揺らす程度の風が吹く。その時俺の鼻に石鹸のような清潔感のある臭いが漂った。

風の向きからして発信源は彼女で、派手な香水ではないことにまたもやギャップを感じてしまう。



『……なんで、高杉と付き合ってんですかィ』

『なんでって……なんでだろうね？』



はぐらかされた。まるで俺の胸の内を読んでいるかのようにクスりと微笑む。そして悪戯っ子みたくニヤニヤと口角を上げたかと思えば、「本人にも言ったことないよ」と俺の背後を見上げる。


はっと息を呑みながら後ろを振り返ると、そこには俺を鋭い目つきで見下ろす高杉が立っていた。



『おそーい』

『てめェがフラフラしてるから俺が探してやったんだろ』



「はいはい」と彼女はスカートの土埃を払って立ち上がる。そうして高杉を追い越しては屋上の扉を開け、「またね〜」とバカみたいに明るい声で俺に手を振った。


俺はその後を追う高杉を引き止めるように声を出してしまう。



『……アンタも一人の女に執着したりすんだな』

『悪ィか？』

『いいや、別に』



そんな相手に出会えたことが、ほんの少しだけ羨ましく思えただけだ。

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