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……そんな彼女が。強い彼女が愚痴零しの相手に選んだのは彼氏の俺ではなく土方。そう改めて考えると腹の底からふつふつと怒りのような、苦しい焦燥感が湧き出す。
座敷を立った俺は靴を引っ掛けて彼女たちがすわるテーブル席へと向かう。俺の姿に先に気付いたのは土方で、その視線により彼女は俺の方を振り向いた。
『総悟……』
「偶然」「飲みに来たの?」と俺の後ろへ首を伸ばし、俺がいないことにも気付かずに楽しく酔っている友人を見る。そうして小さく笑って、「元気だね」と目を伏せた。しかし俺がそれに対してなにも言わず、ただ突っ立っているのを怪訝そうに俺の顔を覗き込んだAさんは、もう一度「総悟」と俺の名前を呼ぶ。
『お友達のところに戻らなくていいの?』
『……別に』
そう言ってAさんの横の空いてる席に座ろうとしたが、俺の腕が後ろに惹かれてしまう。その方を確認すると、共に飲みに来たメンバーの一人である女がそこに立っていた。
『沖田くん、今からもう一回乾杯するんだって』
「早くおいでよ」と俺を誘う猫なで声。チラリとAさんの様子を見れば、彼女は土方と共にコートを着て鞄を手にし、席を立っているではないか。俺がその姿に少々目を丸くしていると、Aさんは「あんまり飲みすぎないようにね」と俺に忠告を残して店を出ようとする。
俺はお会計をしている彼女たちから目が離せず、まとわりついてくる女の声も聞こえない。ついに店を出て行った彼女を、俺は急いで金をテーブルに置いて足早に「帰る」と告げて追いかけた。
その時目に映ったのは、土方の胸元に額をつけて薄手のコートの胸元を握りしめているAさん。俺は何を考える間もなく、土方から彼女を引き離す。
『触んな』
キッと睨みつけるも、土方は特に怯みもせずいつも通りの平然で俺を一瞥した。そうして浅い溜め息を吐き、勝手にしろと言いたげに丁度来たタクシーへと乗り込む。残された俺たちの間はシンと静まり返る、まるで雪が降っているような空気になった。
小さく息を吸ったAさんは俺を横目に見て、そして恨めしそうな顔をしては俯いてしまう。悔しそうに唇を噛むから、俺はその硬く結んだそれを解くように彼女の側頭部に手を添える。
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ハーレクイン(プロフ) - どうか…どうか彼氏坂本辰馬、友情出演桂小太郎を…お願いしますぅぅぅう あなた様の作品いつも楽しく読ませていただいています!好きです!坂本さん結構マイナーなので作品どんどん作って欲しいなあ。なんて!これからも無理せず頑張って下さい! (2018年9月4日 23時) (レス) id: b56fa1b191 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜アリス ダリア(ボカロ好き!!) - リクエストで「坂本辰馬」が彼氏で、友情出演が「桂小太郎」お願いします!! (2017年12月28日 3時) (レス) id: 6d3622490b (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 鳥雫さん» いえいえ、こちらこそリクエストありがとうございました!! またお暇がありましたら読んでいただけると嬉しいです( ´ ∀`) (2017年12月25日 11時) (レス) id: 645308de9c (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 銀皐月さん» 銀さん本当に好きだね笑笑 イラスト! 待ってる! 楽しみに待ってるよ( ´ ∀`) できたら言ってね! 見に行きます!! (2017年12月25日 11時) (レス) id: 645308de9c (このIDを非表示/違反報告)
鳥雫(プロフ) - 土方さんほんとイケメン....... (2017年11月22日 21時) (レス) id: 40fe2f910d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年7月13日 19時