手のひらサイズの新聞紙の上で ページ16
もやもやした気持ちを抱えたまま、ほんのすこしの期待を弟によって植え付けられたまま。わたしは結局どの方向に踏み出すこともできずに、さらに数週間を過ごした。
『次いつ暇？』
その間も、伊沢くんからは頻繁にLINEが届く。
『来週末空いてる？』
最初こそやんわり断っていたけれど、だんだんとそれすらも申し訳なくなって最近は時間を置いて既読だけつけて無視をする、というのを繰り返していた。
『やっぱり無理？』
『いつなら行ける？』
それでも、彼からの連絡は途絶えない。
お誘い、返事の催促、次のお誘い。それの繰り返しだ。
無視をするくらいなら、最初っからブロックして全てを遮断してしまえばいいのに。自分でもそう思うけれど、それをすればきっと後悔するってわかってるから。
でも、そろそろ。どの方向に進むにしても、そろそろ、踏み出すべきなのだ。
勇気を出して切り出した別れも、友達になろうと柔らかくかたちを変えられてしまった。
友達になると決めたのに、好きな気持ちを切り離しきれなかった。
だから今度こそ離れようとしているのに、完全に遮断するのは怖くって、なんとなく嫌で、なあなあにしたまま。
「はあ」
自然にため息がこぼれる。結局わたしはなにをどうしたいんだろう。好きの気持ちを押し殺して友達でいられる気もしない。だからといって、よりを戻したいだなんて思っちゃ絶対にダメだ。
そうやって選択肢を縮めていくと、どこにも行けないことに気付く。道はどこにも伸びていないんだとわかってしまう。
ジャンケンに負け続けて新聞を折り畳み続けたらいつの間にか片足でフラフラしていた。そんな状態のわたしは、どこを見て進めばいいのだろう。ジャンケンに負け続けたっていうのも、面と向かって敗北を味わったのではなく、全部不戦敗。
だからこそ、運がないなあと笑い飛ばすことはできない。新聞紙が手のひらサイズになった理由は、不運ではないのだ。
『A』
興味のない記事をスクロールしながら、ぼんやりと考え込んでいると画面上部に通知が届く。またか、またわたしは新聞紙を折り畳む羽目になるのか。
ため息をつきながらも、スマホから目が離せなかった。リアルタイムでメッセージを受け取るのはなんだか久しぶりだなあと思ってしまって、つい。溜まっている通知ではなく、今現在の彼からのメッセージに、つい、目を奪われていた。
『家に俺のバインダーない？』
『黒いやつ』
『もし見つけたら教えて』
そんなときに限って、届くのはいつもとは全く違う内容だった。
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ウィンターくん(プロフ) - 更新うれしいです！ありがとうございます。ここのとこ2話で話がぐっと進んでますね…！ (2021年4月12日 8時) (
レス) id: 6c1e210fc5 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの。(プロフ) - 初コメントです多分。あまりにも世界観に引き込まれすぎました。ここまで読んで続き！もっと読みたい！早く！ってなりました。読者側がこんなことを言うのも烏滸がましいのですが、文才溢れすぎてもう天才的で他のも読んだことあるのですが全て面白かったです。 (2021年4月10日 21時) (レス) id: 6d66e5d0a1 (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ウィンターくんさん» ウィンターくんさんいつもコメントありがとうございます！これからも頑張りますので、よろしくお願いします(^^) (2021年4月9日 22時) (レス) id: bcbdfee6f7 (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ゆゆこさん» ゆゆこさん、コメントありがとうございます。楽しみにして何度も読み直していただけたとのことで、とても嬉しいです（ ; ; ）これからはもうすこし更新頻度を上げたいと思ってます！これからもどうかふたりを見守っていてください！！ (2021年4月9日 22時) (レス) id: bcbdfee6f7 (このIDを非表示/違反報告)
ウィンターくん(プロフ) - 更新嬉しいです。ご無理なさらず、でもこっそり続きをお待ちしています。 (2021年4月2日 19時) (レス) id: 0f9ee489eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぶっく。
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年8月10日 23時
