凄まじい付箋は努力の証 ページ17
無視をするわけにもいかなくて、というかそういうことを考える暇がないくらい条件反射で既読をつけて返信をした。
『めっちゃインデックスつけてたやつ?』
送ってしまってから、彼から届いたメッセージにこんなはやさでリアクションまでするなんて随分久しぶりだと気付いた。
『それ』
すぐに既読がついて、すぐに返信がくる。ああ、この画面を開いたままメッセージを受け取ってしまった。リアルタイムでの会話にドキリと胸が冷えた。
するり、とん。
片足でなんとか持ち堪えていたけれど、小さな新聞紙の上に乗ってフラフラするのも疲れてしまった。降参です。そういう気持ちでゆっくりもう片方の足でただの床を踏み締める。ああ、この感覚は久しぶりだ。
わたし、想像や思い出じゃなくて、いまを見ている。
不安定な紙を破り捨てるような気持ちで、彼のことを当然のように考えている。
急いで黒いバインダーを探す。直近の資料なんかを整理していると付き合ってる頃に言っていた。冷静に考えてみれば、そんなふうに毎日使うようなものが今更わたしの家から出てくる確率は低い。
ありそうな場所……具体的にいえば、本棚や雑誌が積まれたラックの下段、使わない教科書をまとめたボックス。そのあたりを探しながらため息を吐いた途端に、その違和感に気が付いた。伊沢くんにその旨を伝える。だからわたしの家じゃなくってもっと最近利用した場所を探してみたほうがいいよ、という気付きを。
でも彼の返信よると、最近管理の方法を変えていたので必要なかったけれど過去のものが急遽必要になった、とのことだ。
ううん、まあ、そりゃあそうだよなあ。賢い人だもの、ちゃんと頭の中であのバインダーがある場所の候補を精査した上で聞き回ってるに決まってる。
『ありそうなところ探してみてるけどいまのところないよ』
『まだ見つかってない?』
ラックからゴソッと取り出して、ひとつひとつ確認する。黒いものに反応してしまうけれど、どれも探してるものではなかった。
『ありがとう』
『ごめんまだ見つかってない』
『わかった』
『ちょっと棚動かしたりしてみる』
『うちにあったらどうすればいい?』
急遽必要になったと言っていたし、見つけたらすぐにでも渡せるようにしておきたい。
『え、まじ?ごめん助かる』
『そのときは取りに行く』
『わかった』
『とにかく探してみる』
伊沢くんにこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない。とにかく、この家にあるかもしれないのならば、全力で探さなくては。
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ウィンターくん(プロフ) - 更新うれしいです!ありがとうございます。ここのとこ2話で話がぐっと進んでますね…! (2021年4月12日 8時) (レス) id: 6c1e210fc5 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの。(プロフ) - 初コメントです多分。あまりにも世界観に引き込まれすぎました。ここまで読んで続き!もっと読みたい!早く!ってなりました。読者側がこんなことを言うのも烏滸がましいのですが、文才溢れすぎてもう天才的で他のも読んだことあるのですが全て面白かったです。 (2021年4月10日 21時) (レス) id: 6d66e5d0a1 (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ウィンターくんさん» ウィンターくんさんいつもコメントありがとうございます!これからも頑張りますので、よろしくお願いします(^^) (2021年4月9日 22時) (レス) id: bcbdfee6f7 (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - ゆゆこさん» ゆゆこさん、コメントありがとうございます。楽しみにして何度も読み直していただけたとのことで、とても嬉しいです( ; ; )これからはもうすこし更新頻度を上げたいと思ってます!これからもどうかふたりを見守っていてください!! (2021年4月9日 22時) (レス) id: bcbdfee6f7 (このIDを非表示/違反報告)
ウィンターくん(プロフ) - 更新嬉しいです。ご無理なさらず、でもこっそり続きをお待ちしています。 (2021年4月2日 19時) (レス) id: 0f9ee489eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぶっく。 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年8月10日 23時