ダイゴさんの姉の話【pkmn】 (ページ28)

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第6話何度だってページ28

出されたコーヒーを手に持ち、何をするわけでもなくぼーっと一点を見つめる。
そんな弟の様子を見て、一つため息をついた。

『傷心中かな、元チャンピオン様は』

「……姉貴」

ことん、とお茶菓子を机に置く。
一瞬こちらに向けられた瞳は、すぐに逸らされる。
その様子を見て今度は苦笑いをこぼした。

突然研究所まで訪ねてきて何事かと思えば。
……とは言うものの、彼がここを訪ねてくることなんて分かっていたことだし、その理由も分かっていた。

「もう、知ってたんだね」

『……まぁ、一応？』

「全く、こういう時だけ情報が早いんだから」

普段のAといえば、基本的に研究所に篭って調べ物をしているか、外に出てフィールドワークを行っているかで……テレビなど観ないし、必要な情報は辛うじてネットニュースで手に入れる程度だ。

それでも、今回の事ばかりは……すぐにAの耳にも入ってきた。

『強かった？ハルカちゃん』

「……うん、すごく」

それは、つい先日の出来事。
………ダイゴは負けたのだ。
リーグに挑戦してきた、齢12の女の子に。

12歳の女の子に負けた、というと少しばかり情けなく聞こえてしまうかもしれないが、その女の子はホウエンを救った凄い人物であり、ラティアスやラティオスにも認められたトレーナーだ。

その実力は、ダイゴも…もちろんAも、十分すぎるほどに分かっていた。

『悔しい？』

「……うん、でも、流石だなって思ったよ。
彼女のことは石の洞窟で初めて出会った時から何かと気にかけてきたけど、こんなにも強くなってるなんて」

気にかけてきた子だからこそ、チャンピオンも打ち負かすほどのその成長が嬉しくもある。
だけど、長くその地位を守ってきたチャンピオンとしてならば……

「でもやっぱり、……悔しいなぁ」

絞り出すような声。
あまり見せることのない弟の弱い部分。
くしゃりと頭を撫でれば少しばかり俯く。
一瞬だけ……潤む瞳が見えた気がした。

『悔しい、って思えるのは……まだまだ成長できるからだと私は思うよ』

「……そうかな」

『そうなの』

空になったコーヒーカップを取り上げ、もう片方の手に自分のカップを持って再びコーヒーを淹れる。
そしてまた、ダイゴの目の前にカップを置いた。

『ねぇ、今日時間ある？』

「え？あるけど……」

『じゃあさ、それ飲んだら少し付き合ってよ』