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中山道さん8 ページ11



 中山道は羽幌に手を引かれながら涙を流した。

「わ、たしが、い、っくを……」

 泣かした。と声を震わせて言う中山道に羽幌は彼女を静かに抱き
しめた。小さな肩を震わせている。中山道はそれがダメだとも知っ
ている。幼い彼等に負担をかけてはいけない。笑わなくちゃいけな
い。そう分かっているのだ。

「大丈夫ですよ、中山道さん。俺達の神様。大丈夫ですから」

 羽幌の声に中山道は何も言えなかった。
 ただ静かに涙を流す。

「あ! 中山道さん見っけ! お昼受け取ってきましたよ! 相変
わらず、ケチりやがってますけど!」

 ぬっと現れたのは幌内だ。
 彼は中山道が泣いていることに驚いたようではあったが、決して
言葉を濁すことなく、明るい声で彼女に声をかけた。それに中山道
はやっとクスリと笑うと早く食事に行こうかと笑う。
 幌内と羽幌は顔を見合わせて苦笑すると、各々中山道の片手ずつ
を取り彼女をエスコートするので、中山道は擽ったそうに笑うと大
人しくそれに流されることにする。
 現役の路線達が使うこの建物に入ることを禁じられている廃線組
は、数少ない日陰に集まって食事をしていた。中山道達が行くと、
彼等は揃っていい場所を開けようとするので、それを止めてから中
山道は口を開く。

「ここには現役路線達は居ない。今のうちに涼んでおくように」

 彼女の言葉を聞いて、彼等は揃って長袖をまくったり脱いだりし
ている。その腕には痛々しいほどの痣や包帯がある。これを、現役
路線達に見られるわけにはいかないのだ。
 汗をかいている廃線達に現役路線達は脱いだらどうだとか、水分
はちゃんととっているかだとか気にかけてくれていた。それを聞き
入れるわけにはいかないため、息苦しくもあったが、純粋に嬉しか
ったのだ。

「中山道さーん。食事、ちゃんと摂ってくださいよー」

 そう声をかけた大宮に中山道は笑って手を振るだけで応えた。
 中山道は正直、食事をしたい気分ではない。しかし、それで迷惑
をかけられないとゆっくりと箸を進めたのだった。

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聖藍萌愛亜(プロフ) - ぴよっちさん» わかりました!読み返しながら待ってます。 (2017年1月22日 18時) (レス) id: 1ec8964610 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよっち(プロフ) - 聖藍萌愛亜さん» コメントありがとうございます。返信にお時間が経ってしまって申し訳ないです……。続きが気になると言っていただけてとても嬉しいです!修正してからもう一度更新していこうと考えているので、よろしくお願いいたします (2017年1月22日 17時) (レス) id: a592d04503 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよっち(プロフ) - 彩楓さん» コメントありがとうございます。お時間が経ってからの返信ご容赦ください。すごいと言っていただけてとても嬉しいです!修正して再び更新したいと思いますので、よろしくお願いいたします! (2017年1月22日 17時) (レス) id: a592d04503 (このIDを非表示/違反報告)
聖藍萌愛亜(プロフ) - 青春鉄道にハマってから時間があまり経っていませんが、大好きです!とても面白くて続きが気になります……!無理をしない程度に、更新頑張ってください!! (2017年1月21日 23時) (レス) id: 1ec8964610 (このIDを非表示/違反報告)
彩楓(プロフ) - はじめまして!青春鉄道だいすきになってから4年が経とうとしてる彩楓です!凄い小説ですね!私も見習わなくちゃ!これからも頑張ってください!! (2016年12月28日 10時) (レス) id: e14b6601c7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴよっち | 作成日時:2016年1月10日 2時

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