風紀委員長のわんこですが (ページ17)

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16匹目　バレンタインデー② ページ17

昼

『失礼します』

私は暗澹たる気持ちで応接室に入る。

机の上には没収したであろうチョコレートが山積みになっていた。

「回収してきたの？」

『……いえ…』

委員長は、「そう」とだけ言った。

自分が渡せないぶんも他の子にはどうか思いを遂げてほしい。それを踏みにじるようなこと、私にはできなかった。

「今年は手作りばっかりだ。売ってるやつのほうがおいしいのに」

呟きながら机の上から高級チョコレートを探し、箱を開けて一粒口に入れた。

『え……食べるんですか？』

「気が向いたらね」

それなら、もしかしたら……

私はバッグに手を入れ、チョコレートにつけていたメッセージカードを取り外した。

『あの、忘れてたんですけど、ひとつだけ回収しました』

ハート形の箱を取り出して静かに置く。

たとえ気持ちが伝わらなくても、私からだとわからなくても、"食べてもらえるかもしれない"それにすべてを賭けたかった。

「ふぅん」

委員長はそれを手に取って興味深そうに見る。どこにも何も書いていないから、市販のものかわからないのかな。

「…………」

あまりにじろじろと見ているから、私からだとバレるのではないかと冷や汗が背中に流れた。

『……さみしい、ですね。せっかく気持ちを込めて作ったのに』

話を逸らしたくてそう言ったが、委員長の顔が上手く見られない。

「さみしい？気持ちを込めたって味は変わらないでしょ」