悪夢にうなされて ページ9
以前から思っていた。
生暖かいお湯に浸かっているような感覚。
それは気のせいではなく、確実にそうなのだと思った。
忍びとして生まれ、生きてきた。
なのに、私は。
今の私は忍びではない。
生温いお湯に浸かって、のうのうと生きて。
血に濡れた赤い手。
洗っても洗っても落ちない赤。
何度も手を洗っても、この手は赤く、汚らわしい。
どうしてお前は生きている?
どうして死なない?
俺が、私が死んでいて
ど う し て お 前 が 生 き て い る ん だ 。
「!!?」
がばりと布団から飛び起きて、ガタガタと震える体を精一杯抱きしめる。
そうだ。
私は怖いんだ。
のうのうと自分だけが生きていて。
仲間を見殺しにして。
なのに、なのに……
「ハァ…ハァ…………」
自決する?
いや、ダメだ。
怖い。
普段は強がっていても、私は弱虫だ。
自分で自分の命を断つこともできない弱虫。
怖くて怖くてたまらない。
「フーーーッ、フーーーーッ………」
「A」
「!?」
「落ち着け。俺だ。ゆっくり息を吸え。そして吐け。いいな」
「フーーーッ………ハァ……ハァ……」
「そうだ…。いい子だな。またあの夢か?」
ダメだ。
いつもみたいに言葉が出てこない。
こいつに言いたいことは山ほどあるはずなのに。
口が開けない。
「大丈夫だ」
「……フーーーッ…はぁ…はあ」
「手に込めた力を抜け。ゆっくりだ」
がっちりと握った拳に、大きな手が伸びてきた。
言われた通りに力をゆっくりと抜くと、私とあいつ(宇髄)の指が絡まった。
Aは度々、ふと悪夢を見る。
それは今まで俺たちが忍びがしてきた事に対する、罪の重さの象徴なのだろう。
Aは特にソレに敏感だった。
里抜けした今も、ふとそれを思い出しては悪夢を見て、呼吸を乱す。
放っておくと死んじまいそうな、悲しい音。
怯えた音を出して。
「大丈夫だ」
Aを抱きしめて、背中を叩く。
まるで母親が子をあやすように優しく。
この時ばかりはいつも飛んでくる暴言が止む。
それだけ余裕が無いんだろう。
((こいつは罪に囚われ続けている……。がんじがらめにされて……もがいて、不器用ながらに助けてと叫んでんのに………))
Aの性格上、それが素直に口に出せない。
口に出せたら少しは違うだろうに。
((素直になれ。A……))
素直になれ?何馬鹿なこと言ってんだこの糞馬鹿野郎は→←良薬口に苦し
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お餅(プロフ) - 終わらんといてーーー (2022年2月13日 15時) (レス) @page16 id: 28886abf9c (このIDを非表示/違反報告)
ちょる(プロフ) - はじめまして!!コメント失礼します!!続きが気になりました!いつか続きを更新してほしいくらいです!! (2021年12月22日 12時) (レス) @page16 id: 8f8ae7ff3b (このIDを非表示/違反報告)
万札 - 続きをお恵み下さい……全てが刺さりました…好きです… (2021年12月1日 23時) (レス) id: fa3b030bed (このIDを非表示/違反報告)
ぴえん - 終わらないでくださいいいい (2020年1月13日 18時) (レス) id: e55a66c0f2 (このIDを非表示/違反報告)
守小町慶 - え、めっちゃ好き。ドンピシャすぎて何も言えない。 (2020年1月5日 23時) (レス) id: c4783174d3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ずんだ (旧 國子) | 作成日時:2019年10月21日 21時