・32 ワタシ ページ33
「ありがとうございます。」
視線を落として、翔さんに感謝の言葉を投げた。
「……でも……無理だ……」
そうなの、そうなんだよ。
もしも、もしも
まだアイツが外に出られていなかったら。
会いに行ったところでそれはただの冷やかしでしかない。
「あ、まだ無理なの？じゃぁまた引き続き頑張ってね。」って
そう言ってまた離れるほかないんだから。
「あぁー……ごめん、マジごめん！！」
翔さんがケータイをテーブルに置くと「あぁぁーー！！」
と声をあげながら頭をガジガジ掻きむしった。
「マジで余計なお世話だった！！あぁーーーもうやだっ！！」
「いやいや翔ちゃん(笑)アナタが悩まないでよ。」
「お願いだから今の一連の出来事はなかったことにして！無視して！」
「いやいや、ありがとうね？おかげさまでちゃんと現実と向き合う事が出来まして」
「ああああ！！お願いだから行くのやめるとか言わないで！！
聞かなかった事にして俺の言った事はぁぁぁーーー！！」
翔さんの様子を見て、声をあげて笑って
「大丈夫だよ」って言いながら
内心、ちっとも大丈夫じゃなかった。
なんでこんなに……振り回されなきゃいけないんだろう。
・
日を追うごとに……
アホらしい
バカらしい
どうでもいい
もう、考えたくないって……
そう思う自分がいて、
スケジュールの都合上、珍しく5人全員揃って
アイツのいる県に前の晩から滞在する事になった日の夜。
「え、明日？行きませんよ？」
「「えぇっ！！？」」
揃いで食事をしていた時に、明日のスケジュールを話す潤くんの言葉を遮って
相葉さんが俺に余計な話しを振ってくるものだから
正直にそう言ってのけると、当然全員が一斉に俺の方に顔を向ける。
「うそでしょっ！？何で！？」
「やっぱり俺のせい！？」
「ちょっと翔ちゃん何したのっ！？」
ぎゃーぎゃー騒ぐ人達を尻目に、俺は食事を終わりにして席を立った。
「ニノ、ほんとなの？」
引き止めるようにして、相葉さんが俺に声を掛ける。
「うん、ほんと。何かめんどくさくなっちゃって。」
俺の言葉に大野さんが吹き出しながら「それもアリかぁ。」なんて言うから
「それじゃ、お先です。」
そう言って席を離れる俺を、誰も止めはしなかった。
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2014年9月9日 16時
