・12 ワタシ ページ13
俺の問い掛けに、さとみちゃんは「慰めにきたー。」と返事をする。
「いや、危ないよ……危なすぎる！なにこの展開！？」
「だって、ニノすごく落ち込んでたから……」
「だからって何で来るのよ！？」
「だから、慰めたくて。」
ちょっと待って、俺知らないよ？
こんな場面で言う慰めなんて、ピンクなやつしか知らないよ？
「……なんで慰めたいの？」
「……なんで？」
さとみちゃんは天井を見上げて眉間にしわを寄せ、必死に言葉を探そうとするけど
出てきた言葉は「分からない。」だった。
「わかんないの！？」
「んー……そうやって聞かれると……確かに何でなんだろ……」
絶対酔っ払いのノリだよねコレ。
でも、さっさと追い出すのも失礼だったりするの？この場合。
どうすっかなって分かりかねていると、
さとみちゃんが真剣な顔をして、遠くを見つめて話し始めた。
「ニノは、本当に好きだったんだよね？あの子のこと。
撮影の合間にね、ニノがあのお店に連れて行ってくれた時の、
ニノがあの子を見る目が凄く優しくてね、愛情に満ち溢れててね、
それが、見ていて心地よくて、なんか、好きだったんだよねぇ……。」
さとみちゃんが、凄く綺麗な顔をして遠くを見つめる姿は
何かの役を演じているかのようにも見えるくらい整っていて、引き込まれそうになる。
「だからなんか、ニノが……うまくいかなくて落ち込んでる姿を見たら、
自分まで悲しくなってきちゃって。あたしまで落ち込んだの。」
苦笑いして、俺を見つめるさとみちゃんの目が少しだけ、濡れている様な気もした。
「だから、まぁ、自分も慰めて欲しくて…自分を慰めたいのかな。本当は。」
そういってえへへ、っと笑う。
「ごめん、意味わかんないね。やっぱり、帰る。」
そう言ってさとみちゃんが、すぐ目の前のドアの鍵を開けると
俺はその手を制止して、さとみちゃんを強引に自分の方に向かせると
その唇に、勝手に自分の唇を押し付けた。
驚きもせず俺を見上げる瞳に向かって俺は
「……慰めてくれるんでしょ？」
と小さく呟くと、さとみちゃんの瞳がキラキラと揺れて
「慰めて欲しいの？」と、もう分かりきった事を聞いてくる。
「…・・・慰めてよ。」
俺の呟きを聞いた彼女が、俺の肩に腕を回す。
ゆっくり目を瞑って傾く顔に合わせて、俺も逆側に傾いて
彼女の唇にキスをして、そしてそのままベッドルームへ行くまで、キスは続いた。
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作者名：あひる x他1人
作成日時：2014年9月9日 16時
