トモダチ／コイビト【S.S】 (ページ32)

今日:13 hit、昨日:0 hit、合計:93,970 hit

32 ページ32

「俺が自分に自信が持てるようになるまで待っとけよ。」

「……え？自信？」

「今は親に養ってもらってる寄生虫だよ？自分で稼げるようになって

自信がついたら、迎えに行くからさ、それまでお前も男つくって女でも磨いてたら？」

櫻井の口から放たれた言葉、それはまるで、

告白を通り越したプロポーズのように聞こえた。

「……自分で稼ぐって、どんだけ先？」

「俺の計画では26歳の時に役職につく。その時かな。」

「どんだけエリートのつもり……。」

「俺なら可能だ！」

櫻井はわたしの頭を、まるで犬を撫で回すようにわしゃわしゃかき回した。

櫻井の恋愛感が一般人と比べると全然かけ離れている事に気付く。

ただの友達として？そんなに待てるわけないでしょ！

その間に櫻井が、今までどおり彼女をとっかえひっかえするのを

わたしはずっと横で眺めてなくちゃいけないの？

付き合ってもいなければ結婚もしてないのに

“最後に帰ってくるのはお前の所なんだから、お前はどっしり構えて待ってろ”っていう

浮気性の男を甲斐甲斐しく待ち続ける、昭和の女の絵が頭の中に浮かぶ。

「男でも作って女磨いて待っとけとか、ずいぶん自信たっぷりだね？」

ぐしゃぐしゃにかき乱された髪の毛のまま、櫻井をじっと睨みつけると

櫻井は「そりゃね、だって俺の事好きでしょ？」と平気な顔して言ってのける。

ずるい。ずるすぎる。

何もかも分かりきった顔をして、わたしの人生の主導権を握ろうとしてる。

待てるわけない、なんて強気な事を言ってやろうと思ったけど、

わたしは結局待ってしまうんだ。

櫻井からされた提案を、甘んじて受けいれてしまうんだ。

「櫻井は本当に、最後はわたしを選ぶの？」

わたしの言葉を聞いた櫻井は、満面の笑みで

「もちろん！」と言って、目を細めて首を傾けた。

悔しいな、だけど

「好きだ」なんて告白されるよりよっぽど嬉しくて

わたしは涙を零しながらも、笑った。