トモダチ／コイビト【S.S】 (ページ1)

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廊下で櫻井を見つけた。

櫻井の方もわたしに気が付くと、にんまり笑ってケータイを取り出し

わたしとの距離を徐々に縮めていく。

ケータイを操作しながら近付いてきた櫻井は、わたしと丁度落ち合った所で

ケータイの画面をわたしに見せてきた。

「スカイベリーゲットー♪超大粒じゃね？」

「おいしそー！んじゃ早速？」

「今日やりますか♪」

2人で顔を見合わせて笑う。

幼馴染と言えばそうなるのかもしれないけど、

厳密に言えば、ただ父親同士が腐れ縁なだけのことで。

だけど幼稚園から高校まで、気付けばずっと一緒にいた櫻井翔は

わたしにとっては最高の、一番の友達だった。

そんなわたし達の月一の恒例行事は、一緒にチョコレートフォンデュをすること。

なぜなら2人して苺に目がないからだ。

「一旦帰ってからお前ん家行くわ。」

「いや、一緒に櫻井ん家行って、」

「そうだな、通り道だからそれで。」

「彼女は大丈夫なの？」

「さあ？大丈夫じゃない？」

櫻井は眉目秀麗で才色兼備。

女の子にはモテモテで、恋人には事欠かない。

初めて櫻井に彼女が出来たと聞いた時、わたしは密かに泣いた。

この、特別な関係が終わっちゃうと思ったから。

だけど櫻井はわたしとの付き合いを、一切変えることはなくて

それが原因で恋人と別れることにもなるみたいだけど……

その事が凄く嬉しくて、絶対に手放したくなくて、

櫻井の彼女に詰め寄られても、取り巻きに絡まれても

わたしは櫻井が大切にしてくれるこのポジションを

いつまでも守り続けていたし、ずっと守っていくんだと心に決めていた。

だけど、本当は…・・・

本当は、櫻井の一番になれたらと、考える事ももちろんある。

もしもわたしが「恋人にして？」って頼んだら、櫻井は何て答えるんだろう？と。

だけど一番になれなくても、ずっと隣にいられるなら、

これ以上幸せな事はないと、いつも自分に言い聞かせていた。