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｢あ、あの……｣
しかし基本的に病室ヒキコモリなのでコミュニケーションが苦手だというのも事実。ここは思い切って見るべきだろうか？
｢その、本……面白､い？｣
｢……これか？面白いけど｣
絵本にしては少しサイズが小さめのように見えるそれには、『ヒーローになりたくないだなんて、言わないで』とタイトリングされていた。
これは本当に面白い絵本なのか、とは思ったが、
｢私、読んでも…いいかな？｣
｢え？うん｣
差し出された本を受け取ると、皮膚科の待合席の、空いている隅の席へと座った。
『ヒーローになりたくないだなんて、言わないで』
子供向けとは思えないタイトルだが、確かに面白かった。主人公は心優しかったが、あることをきっかけに悪の心を持ち始めてしまう。
主人公は敵となり、かつての仲間と対峙した。
しかしそこへ、謎の少女が現れ、主人公と行動を共にするようになる。
最初は反発し合う二人だったが、やがて仲良くなり、主人公は悪の心を失い、優しい青年へと戻った。
……という話だ。
｢どうだった？｣
｢っ！？｣
心臓が飛び跳ねるかと思った。集中していたので、いつの間にか隣に座っていた先ほどの少年に気が付かない上、突然話しかけられてピャッと数センチ椅子から浮いた気がする。
｢とーちゃん早くー｣
と、長い黒髪に所々メッシュの入った少女が、無邪気に目の前を通り過ぎて言った。
よもや新しい個性に目覚めたか……？と思考回路がショートし始めたところで、なんとか冷静になった。
｢どう、だったって……何が？｣
｢本。面白かった？｣
うん、と頷くと、そうかと笑って返してくれた。
｢あの、君の名前は？｣
｢轟焦凍…そっちは｣
｢私は、反射 A…｣
それから私達は本の話をして、お互いの話をして、笑った。
｢轟君は、ヒーローになるの？｣
｢なりたいけど、なりたくない｣
｢……？｣
｢ヒーローにはなりたくないけど、父さんの思い通りにやるのは嫌だ｣
｢でも、轟君の個性すごいから、大丈夫だと思う。きっとなれるよ｣
｢……｣
｢それに、轟君が轟君の力で、轟君の意思でやる事なんだから、お父さんの思い通りなんかじゃないと思う。──なりたいって少しでも思ったなら、なれるよ｣
｢そうかな｣
｢きっとそうだよ｣
にっこり微笑んだところで、向こうから彼の名前を呼ぶ女性がいる。
｢俺、もう行くから｣
｢うん、じゃあね｣
私は静かに手を振って、彼の背中を見送った。
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はっしー - 泣けますね。ラストが、、、、、。爆豪君も結婚して、、、。意外です。面白かったです。 (2017年8月14日 4時) (
レス) id: 789bdf4173 (このIDを非表示/違反報告)
天照月夜(プロフ) - 泣いたァ (2017年7月26日 3時) (レス) id: d4fab0f3f8 (このIDを非表示/違反報告)
漱(プロフ) - まーやさん» コメントありがとうございます…！ラストは結構悩んだんですけど報われない感じになっちゃいました…。切なさを感じてもらえたのであれば幸いです！ (2017年6月11日 15時) (レス) id: 7bc15f0ad8 (このIDを非表示/違反報告)
まーや(プロフ) - 死んじゃうのぉぉぉぉぉぉぉ！？切ないですね！←(空気ぶち壊し) (2017年6月11日 10時) (レス) id: 54dce99bb8 (このIDを非表示/違反報告)
漱(プロフ) - 残念なイケメン系女子さん» コメントありがとうございます！誤字指摘ありがとうございます、修正しておきました！ (2017年6月11日 10時) (レス) id: 7bc15f0ad8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：漱 | 作成日時：2017年4月23日 14時
