【遊戯王】書きたいとこだけの短編集 (ページ1)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:50 hit

【覇王十代】謎の訪問者ページ1

「誰だ」

初めて対面した彼の第一声はそんなものだった

『まあまあ、気にするなって』

覇王は何か言いたげだ…
そりゃあ、自分の城を勝手にうろつくやつが居れば不審に思うのも仕方がない

『この世界の観測と観光がてらにこの城に入ったんだし、色々と見学しても良いよなと思ってね』

人気(ひとけ)が無いから余裕で侵入できたと話すと、呆れられてしまった

「では貴様は何者だ？そして観測とは何だ？」

『私はただの決闘者さ。通りすがりのね
そして観測とは、この世界が正しく、マニュアルの通り進行しているか調べること。
私はね、遊城十代、そして覇王様の観測に来た"観測者"』

「そうだとしても相当な実力が無ければ、ここまでは来れないはずだが…」

ジロジロと私を見つめる

『そんなに実力が気になるなら決闘しないか？』

はた、と動きが一瞬止まった

「いや、やめておこう」

『へえ…それは何故？』

嫌な感覚がしたんだ、とだけ答えられた
おそらくこれ以上の理由は話してくれないだろう

なあ、と話しかけられる
「お前、デッキは何を使っている?」

待ってましたと言わんばかりにニコニコと笑顔になり、私は話し出した
『色々だな。
　少し前まではエレメントセイバーを、
　最近はサイバードラゴンか幻煌龍を使ってる』

相槌を打ちながら聞いてくれる事はないが、この話題から彼はデュエルが好きなのが伝わってくる

覇王様は?と聞くと、覇王で良いと返された

『覇王、貴方は何のテーマを使っているんだ？』

「主にE-HERO(イービルヒーロー)だな」

『…そうか』

もうこの段階で彼は…十代は…
本当に覇王になってしまったのか…

数秒だけ、沈黙があった
「お前、行く宛はあるのか?」

もう夜というのが自前の時計でわかった
私はなるべく生活リズムは整えておきたい派だ

『無い。今日は日帰りの予定だったからな』

「では、城に泊まっていくと良い」

思ってもいない返事に、正直ビックリした
覇王はまだ完全に十代の心を失っていないのか？

「だがな、一つ条件がある。
お前は、これから覇王城で暮らせ」

さらに衝撃が加わる

「お前が観測者ならば未来を知っているはずだ
ならば、我に道を示せ。拒否権は無い」

何を言っても無駄であることが、覇王の威圧感で分かる
前任の観測者に、覇王様に興味を示されてはいけないと言われたことを、今思い出した
『了解いたしましたよ、覇王。これから、よろしくお願いいたします』

覇王が、不敵に笑った