第拾話、暗夜 ページ10
ポートマフィア。
横浜の夜を支配し、管理する非合法組織。その名は海外にも届いており、同時に組合との戦闘も耳にしていた。
縄張りに入ってしまったこの男には即座に死が待っている。
だが、そのために態々幹部が赴いたのではない。
「其方等の現状をポートマフィアは既に把握しておる。本来なら首を突っ込む暇もないのじゃが、庭を荒らす害虫は駆逐せねばならぬ。其方にはまず事情を話してもらうぞ」
連れてこい、と視線で促す。
構成員達がゾロゾロと男を囲う。後は任せておけばいいので、尾崎は背を向けて歩き出した。
直後、
「うぁああぁぁぁあああああぁ!!!!」
男の悲鳴が響く。
何事かと振り向けば、男は自身の喉にナイフの切っ先を向けている。構成員の一人が、「動くな!」と銃を構えるが止まる気配はない。
異常なのは、男自身が怯え、涙を流している事。
自分の意思でないことは一目瞭然だった。
ならば、この異常を起こしているのは異能。
素早く周囲を見渡すが、月明かりだけが頼りのこの路地裏では、いくら闇に慣れた目でも人影を見つけることができない。
「___」
唇を震わせながら、男が何かを言っている。
両手でナイフを掴み始めた。
「ゆ、ゆる……赦じ、でぐれ」
求めても、もう遅い。
ナイフは肉を貫いた。
一瞬呻き声が漏れるが、引き抜かれたことで身体は力なく地面に倒れこむ。
構成員が慌てて様態を診ようとするが、「よせッ」と尾崎の鋭い声が飛ぶ。
「異能の類じゃ、決して触れてはならぬ。周囲の警戒をせよ。お前達は周辺を見て回れ」
尾崎の指示に全員が動く。
残った構成員は建物の窓や角を注視する。
尾崎も『金色夜叉』と共に全神経を研ぎ澄ませた。
不気味なほどの静寂が、緊迫した空気を煽る。
「お、尾崎幹部」
一人の構成員が指をさす。
「あれは……なんでしょう」
指差す方を、尾崎を含む全員が視線を向けた。
そして顔を顰めた。
ヒトがいないのに、何故手袋が浮いているのだろうか。
尾崎達の反応を楽しむかのように、その手袋はヒラヒラと手を振った。
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RANA(プロフ) - ゆかりさん» 遅くなりましたが続編で来ました!続編でも読んでいただけたら幸いです。 (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - ゆめのあきさん» そう言って頂けて嬉しいです!ありがとうございます (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり - 続き待ってます (2021年7月23日 16時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのあき(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです! 更新楽しみにしてます! (2021年7月15日 1時) (レス) id: e1a96e1817 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - らむくんさん» そうなんです……シリアスをシリアスにできずに本当に申し訳ないです切腹 (2020年8月14日 1時) (レス) id: 37ff009e06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb
作成日時:2020年8月2日 13時