検索窓
今日:37 hit、昨日:3 hit、合計:124,015 hit

第拾話、暗夜 ページ10

ポートマフィア。
横浜の夜を支配し、管理する非合法組織。その名は海外にも届いており、同時に組合との戦闘も耳にしていた。

縄張りに入ってしまったこの男には即座に死が待っている。
だが、そのために態々幹部が赴いたのではない。


「其方等の現状をポートマフィアは既に把握しておる。本来なら首を突っ込む暇もないのじゃが、庭を荒らす害虫は駆逐せねばならぬ。其方にはまず事情を話してもらうぞ」


連れてこい、と視線で促す。
構成員達がゾロゾロと男を囲う。後は任せておけばいいので、尾崎は背を向けて歩き出した。


直後、


「うぁああぁぁぁあああああぁ!!!!」


男の悲鳴が響く。

何事かと振り向けば、男は自身の喉にナイフの切っ先を向けている。構成員の一人が、「動くな!」と銃を構えるが止まる気配はない。

異常なのは、男自身が怯え、涙を流している事。
自分の意思でないことは一目瞭然だった。


ならば、この異常を起こしているのは異能。


素早く周囲を見渡すが、月明かりだけが頼りのこの路地裏では、いくら闇に慣れた目でも人影を見つけることができない。


「___」


唇を震わせながら、男が何かを言っている。

両手でナイフを掴み始めた。


「ゆ、ゆる……赦じ、でぐれ」


求めても、もう遅い。

ナイフは肉を貫いた。
一瞬呻き声が漏れるが、引き抜かれたことで身体は力なく地面に倒れこむ。


構成員が慌てて様態を診ようとするが、「よせッ」と尾崎の鋭い声が飛ぶ。


「異能の類じゃ、決して触れてはならぬ。周囲の警戒をせよ。お前達は周辺を見て回れ」


尾崎の指示に全員が動く。

残った構成員は建物の窓や角を注視する。
尾崎も『金色夜叉』と共に全神経を研ぎ澄ませた。


不気味なほどの静寂が、緊迫した空気を煽る。


「お、尾崎幹部」


一人の構成員が指をさす。


「あれは……なんでしょう」


指差す方を、尾崎を含む全員が視線を向けた。

そして顔を顰めた。


ヒトがいないのに、何故手袋が浮いているのだろうか。


尾崎達の反応を楽しむかのように、その手袋はヒラヒラと手を振った。

第拾壱話、封筒→←第仇話、遁走



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (156 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
311人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

RANA(プロフ) - ゆかりさん» 遅くなりましたが続編で来ました!続編でも読んでいただけたら幸いです。 (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - ゆめのあきさん» そう言って頂けて嬉しいです!ありがとうございます (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり - 続き待ってます (2021年7月23日 16時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのあき(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです! 更新楽しみにしてます! (2021年7月15日 1時) (レス) id: e1a96e1817 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - らむくんさん» そうなんです……シリアスをシリアスにできずに本当に申し訳ないです切腹 (2020年8月14日 1時) (レス) id: 37ff009e06 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb  
作成日時:2020年8月2日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。