第捌話、写真機 ページ8
探偵社の扉を開け、「ただいま戻りました」と敦が声をかける。普段なら誰かしらお帰り、と返してくれるがそれがない。
代わりに聞こえてくるのは、賑やかな声。
視線を向けると、谷崎の机に谷崎兄妹、与謝野、太宰、賢治が集まっていた。
三人は顔を見合わせ、近くの机に荷物を置いた後、その中に混ざる。
「どうかしたんですか？」
「二人ともお帰り〜。おや、Aもいたのかい」
太宰がいち早く気づく。
よっ、と手を掲げたAは「何してんの」とついでに訊いた。すると、ナオミは手に持っている物を高らかに上げる。
「これですわ！」
「…
きょとん、とする三人にニコニコと笑みを浮かべながら説明し始める。
谷崎兄妹、与謝野で倉庫の整理をしていた時に奥から掘り起こしたのだ。
ポラロイドカメラ。しかもかなり古い物だったので乱歩に訊いてみたら、創設時に記念にと福沢の友人から譲り受けて使って以来、仕舞ったものだという。
折角見つけたのだから、使えたら使おうと盛り上がり、現在手先が器用な谷崎が修理作業をしている。所々細かい部分は太宰が助言していた。
作業が終わったらしい。谷崎がドライバーを置いた。
謎の緊張が社内を包む。
ごくり、と全員が喉を鳴らした。
谷崎はゆっくりと、シャッターボタンを押した。
乾いた音が響く。
次に、写真出口からフィルムが音を立てて現れた。慎重に手に取り、表を向ける。すると、そこにはパソコンが映っていた。
「おおーっ、やりましたね！」
「案外綺麗にとれてるじゃないか」
「少し傷みたいの付いてるけど、こればっかりは仕方ないね」
「むしろ、ここまで鮮明に撮れている方が珍しい」
使えると判り歓喜にも似た声が飛び交う。
早速撮ろう、となった時「俺は帰るよ」とAが鏡花からビニール袋を受け取る。
「えっ。帰っちゃうんですか？せっかくだからAさんも…」
「実は写真苦手でさ。構えられると、なんか緊張しちゃって笑顔とかぎこちなくなっちゃうの」
「へえ。以外に可愛いところあるじゃない」
太宰が揶揄うように笑う。
それに便乗してナオミがAに写真機を構え、与謝野と鏡花が後ろからじりじりと迫る。谷崎と敦はそれを微笑ましく見守っていた。
与謝野と鏡花の手がAの肩に触れそうになった時、
「お前達！仕事はどうした仕事は！」
社長室から帰ってきた国木田の怒号が響く。
よって、写真撮影会はお開きとなってしまった。
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RANA(プロフ) - ゆかりさん» 遅くなりましたが続編で来ました！続編でも読んでいただけたら幸いです。 (2021年8月1日 21時) (
レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - ゆめのあきさん» そう言って頂けて嬉しいです！ありがとうございます (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり - 続き待ってます (2021年7月23日 16時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのあき(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです！ 更新楽しみにしてます！ (2021年7月15日 1時) (レス) id: e1a96e1817 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - らむくんさん» そうなんです……シリアスをシリアスにできずに本当に申し訳ないです切腹 (2020年8月14日 1時) (レス) id: 37ff009e06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：RANA
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb
作成日時：2020年8月2日 13時
