第肆拾漆話、晴天下 ページ48
上を向けば、雲一つない青空が広がっていた。
輝く太陽は胸元にあるルビーがきらきらと赤く煌めいている。
北原は屋上の柵に座り、足をふらふらと遊ばせながら耳元の携帯から聞こえてくる焦燥の声にせせら笑う。
彼等からすれば、亡霊から電話がかかってきた同然だ。
それも、四年前に死んだと思わえれる執行者。その眼で命の灯が消えたのを確認した者が、その肉体を持ち、言の葉を紡いでいる。
非科学的。超常現象。
あり得ない、と唇を動かす様を簡単に想像できた。
「覚えてくれているようで嬉しいよ。お前らも、元気そうで何よりだ」
「ッ貴様」
「フョードルが逃げ道を用意してくれるの期待してたみたいだけど……」
口角が上がっていくのが、自分でもわかる。
「残念だったなぁ。ノアの方舟は、お前達を乗せるつもりはないだとよ」
彼等が何かを言う前に、北原は通話を切った。
通話アプリを閉じる。
ゲームアプリもな動画アプリもなく、必要最低限しかいれていないホーム画面は、青年にしては素っ気なく寂しい。
淡々とタップしていき、自身のデータを全て消していく。
購入した際と同様の姿になったそれを暫く眺めた後、手を離した。いとも簡単に、するりと手を抜け、重力に逆らって落ちていく携帯を見下ろす。
見た限り、下の道路に人は通っていないので、地面と衝突して粉々に粉砕しているだろう。
修正も、データを抜き取ることも不可能だ。あらゆる場所から自身に関する情報は削除したので、現在この世のどこにも、"北原"は存在していない。
よっ、と柵から降りる。
北原の準備はすべて整った。
舌なめずりをして、狂気的な笑みを浮かべて扉に手をかけた。
Recollection1『twins』→←第肆拾陸話、拒否
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RANA(プロフ) - ゆかりさん» 遅くなりましたが続編で来ました!続編でも読んでいただけたら幸いです。 (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - ゆめのあきさん» そう言って頂けて嬉しいです!ありがとうございます (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり - 続き待ってます (2021年7月23日 16時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのあき(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです! 更新楽しみにしてます! (2021年7月15日 1時) (レス) id: e1a96e1817 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - らむくんさん» そうなんです……シリアスをシリアスにできずに本当に申し訳ないです切腹 (2020年8月14日 1時) (レス) id: 37ff009e06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb
作成日時:2020年8月2日 13時