第肆拾話、変化 ページ41
敦は漸く現実を見て、受け入れた。裏切りによって染められた絶望は瞳に映されている。
対して、北原は感情を引っ込める。
ふいに左手を見つめ、次に窓の外へ視線を向けた。
直後、呻き声が聞こえてきた。
敦はハッと顔を上げ、声のした方を見る。崩れ落ちた本棚の下で、谷崎が意識を取り戻して起き上がろうとしていた。
だが、痛みの方が勝っていて上手く身体が動かないのだろう。背中の本は床に落ちたと共に、谷崎も起き上がれずにいる。
北原は一瞥し、「そろそろか」と呟きながら谷崎の方へ向かった。谷崎の腕を持ち上げ、腰に手を回し支えながら立ち上がらせる。
「ごめんな、潤。晶子さんに治してもらって」
呻き声に交じって名を呼ばれるが、答えない。
敦の方へ向かうと同時に拘束を解き、異能で立ち上がらせる。
そして、谷崎を預けた。
「…僕達をどうするつもりですか」
「行って」
「え」
てっきり殺されるものかと思っていた敦は、予想外の言葉に目を丸くする。
「なんで」
「俺はやると決めたら必ずやる。お前らが止めようと何しようと、関係ない」
淡々と告げられる言葉が容赦なく敦の心に突き刺さる。
顔を見られず、俯いてしまうのは仕方なかった。
現実を見たとしても、受け入れたとしても、辛い。その感情は変わらなかった。
「だけど、そのやる事に
最後の言葉に、恐る恐る顔を上げる。
声が出なかった。
そう言った表情に、一見感情はないように見える。だが、それは彼との付き合いがない人間からしたら、だ。
彼と共に時間を過ごした人間＿敦達には、微かな表情でわかってしまった。
知ってる、と唇だけを動かした。
包み込むような温かさとその中にある優しさが、僅かにあったのだ。
「Aさん…」
無意識に、敦はその名を口にした。
「じゃあな。敦」
くるり、と勝手に身体が動く。
抵抗する気力を一気にそがれた敦は、異能の思いのまま。大人しく屋敷の外に出た。
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RANA(プロフ) - ゆかりさん» 遅くなりましたが続編で来ました！続編でも読んでいただけたら幸いです。 (2021年8月1日 21時) (
レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - ゆめのあきさん» そう言って頂けて嬉しいです！ありがとうございます (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり - 続き待ってます (2021年7月23日 16時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのあき(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです！ 更新楽しみにしてます！ (2021年7月15日 1時) (レス) id: e1a96e1817 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - らむくんさん» そうなんです……シリアスをシリアスにできずに本当に申し訳ないです切腹 (2020年8月14日 1時) (レス) id: 37ff009e06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：RANA
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb
作成日時：2020年8月2日 13時
