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第弐拾陸話、亡霊 ページ27

翌日。
探偵社の会議室は静まり返っていた。手元にある複写資料(コピー)を眺めては、信じられないと心の中で首を振る。


録音を聞いた後、"執行者"から渡されたという茶封筒を広津から受け取った太宰と国木田は早速封を開いた。

中に入っていたのは、六年前の新聞だった。


内容は『製薬会社社長 一家殺人事件』。
そこそこ有名な製薬会社で、名前を聞けば誰もが「ああ。あそこの」と思い出すほどには知られていた。事件があってからは別の会社に買収されているので、世間からはすっかり忘れ去られているだろう。

当時は少し騒がられた程度の事件で、憶測が飛びまわっていたが事件解決には至らず、国木田でさえ「ぼんやりとしか覚えていない」と言うほどの、静かに迷宮入りした事件。今になって蘇るとは、誰が想像できたのか。


その中でも特に気にする点はただ一つ。

殺害された被害者の中に書かれた名前には北原夫妻の他には雇われていた家政婦と偶然居合わせていた社員一名。


そして、北原A。


「僕達、死んだ人間と話していたんですか……?」


指先で名前をなぞりながら、敦が呟く。

普段ならすかさず、「そんな訳があるか」とツッコミが入るが、皆の心にそんな余裕はない。今まで普通に話していた友人が死人だったなんて、信じられるわけがない。


また、信じられない点がもう一つ。

彼等にとって、このもう一つ(・・・・)が重要なのだ。


「それなら、なんで乱歩さんが気づけなかったンだい?死人になりすましていたんなら、とっくにあの人が気付いてる筈さ」


本来ならば乱歩が座っているであろう席に全員の視線が集まる。

彼と福沢は、遠い田舎町の事件解決に出張へ向かっていた。加えて、その田舎町は電波が悪く、連絡がついていない。


探偵社の中で、一番付き合いが長く、一番仲が良かったのは探偵社きっての名探偵_乱歩なのだ。証拠写真や物品を見ただけで難事件を一瞬で解決してしまう、あの乱歩がAという死人に成りすました人間に気づけなかった。


勿論。乱歩の次に観察眼が頭一つ抜けている太宰でさえ。

第弐拾漆話、矛盾→←第弐拾伍話、怪火



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RANA(プロフ) - ゆかりさん» 遅くなりましたが続編で来ました!続編でも読んでいただけたら幸いです。 (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - ゆめのあきさん» そう言って頂けて嬉しいです!ありがとうございます (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり - 続き待ってます (2021年7月23日 16時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのあき(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです! 更新楽しみにしてます! (2021年7月15日 1時) (レス) id: e1a96e1817 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - らむくんさん» そうなんです……シリアスをシリアスにできずに本当に申し訳ないです切腹 (2020年8月14日 1時) (レス) id: 37ff009e06 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb  
作成日時:2020年8月2日 13時

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