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第弐拾肆話、交渉 ページ25

「まあ、聞いてくださいよ。ポートマフィアは組合戦での組織の立て直しで、資金をかなり消耗しましたよね」


横浜全体を巻き込んだ組合戦は、その渦中にいたポートマフィアへの被害も大きかった。所有していた建物や武器、後処理に追われる中、削られていくのは疲労による精神と、資金。
破綻するほどではないが、予想外の資金の使用は組織にとっても痛かった。


情報をどこから入手したのか、消えた資金額まで彼は言い放ち、「そこで」と人差し指を立てる。


「俺がその消えた資金額を譲りましょう。もちろん、全額ね」

「…君のような若い者が出せる金額ではないよ」


消えた資金はパッと出せるような金額じゃない。
一般人が五〜十年かけて、やっとできるようなものだ。

否、彼は一般人ではないようだが。それでも、この金額を作るには時間がいるだろう。


疑いの目を向ける森に、彼はポケットから紙を取り出した。さらさらとペンを走らせると、紙が一人でに浮いて森の目の前で静止する。

すぐさま広津が動いた。
じっくり、紙を観察し、妙な仕掛けがないか確認する。ない、と判断したらしく、紙を手に取った。


どうやら小切手の様だ。


「これでどうでしょう」


彼は手を広げて見せる。
金の出どころを知りたいところだが、話してはくれないだろうなと察した。

後ろに下がるよう、広津に目で促し、再び彼に視線を向ける。彼は満足そうに頷くと、「交渉成立ですね」と嬉しそうに笑った。


「話を判っていただけて助かります。ポートマフィアというので野蛮人の長だと思ってましたが……聡明な方でよかったです」

「ただ暴力を振るうだけでは、長は務まらないよ」


森は肩を竦めて笑って見せる。


「これで、私達はこの一件に手出しをしない。だが、彼方が私達に手を出した場合は別の話となるからそのつもりで」

「はい。その辺は大丈夫です。俺が先にやるので」


純粋なる殺意が風に乗って森に触れる。

決して森に向けらえた殺意ではないが、それは奥深くまで浸透してくる。まるで水の膜に包まれているように穏やかだが、指先が振れでもしたらすぐに爆発してしまいそうだ。

第弐拾伍話、怪火→←第弐拾参話、犯人



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RANA(プロフ) - ゆかりさん» 遅くなりましたが続編で来ました!続編でも読んでいただけたら幸いです。 (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - ゆめのあきさん» そう言って頂けて嬉しいです!ありがとうございます (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり - 続き待ってます (2021年7月23日 16時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのあき(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです! 更新楽しみにしてます! (2021年7月15日 1時) (レス) id: e1a96e1817 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - らむくんさん» そうなんです……シリアスをシリアスにできずに本当に申し訳ないです切腹 (2020年8月14日 1時) (レス) id: 37ff009e06 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb  
作成日時:2020年8月2日 13時

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