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第弐拾壱話、提供者 ページ22

水面が揺らめく横浜の海。
そこに映るのは蒼い満月が浮かぶ夜空だった。

月光に照らされた地面に靴音が四つ鳴る。
港の倉庫街を歩くのは太宰と国木田だ。気難しそうな表情をする国木田に対して、太宰は口笛を吹いている。


「実に自 殺にピッタリな夜だ。あっ、あそこに良さげな鉄骨が」

「巫山戯るな。今から何をするのか、貴様は判っているのか」

「もちろん」


くるり、と国木田の方に体を反転させる。


「ポートマフィアと秘密の会談」


会議の後、太宰を通してポートマフィアと連絡を取り、情報提供を求めた。渋られようと、対価を望まれようと、相応の対処をすれば問題ないだろうと一同が覚悟を決めていた。

だが、ポートマフィア首領_森はすんなりと頷いた。さらには彼方から場所と時間を指定してきたのだ。


拍子抜けする程、すぐに決まった密会。それは、太宰の予想は当たっていたという事になる。


約束の場所に、時間ぴったりに着いた。
ポートマフィアはまだか、と辺りを見渡そうとしたが、その必要はなかったらしい。倉庫の影から、初老の男が静かに現れた。

太宰が「やぁ」と軽快に手を振る。


「そっちからは広津さんだったんだね」

「生憎、首領は多忙なのでな」


広津は一定の距離で足を止めた。


知っている相手で、国木田は内心安堵した。

広津とは以前、一戦交えたことがあるので異能力や闘い方を多少なりとも把握している。一度勝った相手でも油断はしてはいけない。


警戒の目を向ける国木田に気づいた広津が視線を返す。


「今宵は君達が欲しいという情報を持ってきただけだ。そんなに警戒せずとも、何もしない」

「だからと言って気を緩めるわけがないだろ」

「まあまあ、国木田くん。そんなに眉間に皺を寄せてると頭に血が昇っちゃうよ?」

「貴様は緩みすぎだ!」


すかさず足蹴が飛ぶが、ひらりと躱してしまうのが太宰という男。

拳を握り締める国木田にある人物を重ねながら、相変わらずだと広津は肩を竦めた。

第弐拾弐話、静観→←第弐拾話、伝染



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RANA(プロフ) - ゆかりさん» 遅くなりましたが続編で来ました!続編でも読んでいただけたら幸いです。 (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - ゆめのあきさん» そう言って頂けて嬉しいです!ありがとうございます (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり - 続き待ってます (2021年7月23日 16時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのあき(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです! 更新楽しみにしてます! (2021年7月15日 1時) (レス) id: e1a96e1817 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - らむくんさん» そうなんです……シリアスをシリアスにできずに本当に申し訳ないです切腹 (2020年8月14日 1時) (レス) id: 37ff009e06 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb  
作成日時:2020年8月2日 13時

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