第弐拾話、伝染 ページ21
それはまるで流行り病のように、ゆっくりと蝕み、侵食していく。今は二組織だけで済んでいるが、これが後一週間も続けば一つ、二つ、三つ……と徐々に増えてしまうだろう。
最悪の場合、組合戦以上に横浜を巻き込んでの大戦もしくは抗争となる可能性も否めない。横浜裏社会史上、最も死体が生産されたとされる"龍頭抗争"と匹敵するような_あるいはそれ以上の血が流れ、命が潰される暗黒の道が敷かれていると言っても過言ではない。
異能特務課にとって、これ以上横浜を荒らされたくはなく、何より損害や不利益を恐れている。
それが、探偵社に依頼した理由の一つだ。
太宰は真実に近いその仮説をすらすらと述べてみせた。
"理由の一つ"という言葉に首を傾げる者と、心当たりがある者と反応が別れる。
「…じゃあ何故、ポートマフィアは対処していないの?」
「え、ポートマフィア?」
鏡花の言葉に敦は首を傾げる。賢治も谷崎兄妹も、国木田も同様に。
だが、与謝野だけはハッと顔を上げた。
「おかしい…」
「何がおかしいんですの?」
「森さんが対処していない事が、だよ」
誰もピンと来ていないようだ。
太宰が説明するために言葉を繋げる。
「特務課や我々探偵社よりも、ポートマフィアはこの異変にいち早く気づいていた筈だ。けれど、彼等は何も行動を起こしていない。そこが一番おかしいのだよ」
「自分達に被害が出ていないからじゃないのか?」
「"常に先手が勝つ"。最適解を求める森さんの言葉だよ。自分達に被害が出る
横浜裏社会を牛耳るポートマフィアだ。無論、龍頭抗争も経験しており、太宰の記憶にもしっかり残っている。
同じ損害を繰り返す愚かなことはしない。けれど、このままアクション一つ起こさなければ繰り返される。
それを判らない莫迦な組織ではないことは、この場の誰もが理解していた。
「これは、ポートマフィアも一枚噛んでる可能性があるね」
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RANA(プロフ) - ゆかりさん» 遅くなりましたが続編で来ました!続編でも読んでいただけたら幸いです。 (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - ゆめのあきさん» そう言って頂けて嬉しいです!ありがとうございます (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり - 続き待ってます (2021年7月23日 16時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのあき(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです! 更新楽しみにしてます! (2021年7月15日 1時) (レス) id: e1a96e1817 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - らむくんさん» そうなんです……シリアスをシリアスにできずに本当に申し訳ないです切腹 (2020年8月14日 1時) (レス) id: 37ff009e06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb
作成日時:2020年8月2日 13時