第拾仇話、緊急 ページ20
武装探偵社、会議室は緊迫とした空気に包まれていた。この空気に、敦はどうしても慣れず、体が硬直してしまう。
手元にあるのはホッチキスで止められた数枚の書類。視線を前に向ければ、進行役である国木田が厳しい表情で立っている。
「全員、揃ったな」
現在この場に集まっているのは敦の他に鏡花、賢治、谷崎兄妹、与謝野、太宰である。例によって、太宰は入水から引き上げられたのでびしょ濡れ状態ではあるが。
「では早速、本題に入る。昨夜、異能特務課から早急に片付けて欲しいという案件が来た」
組合戦の遺産を狙った海外組織の問題が絶えず、異能特務課、軍警、武装探偵社が迅速に処理しやっと落ち着いてきたが、ある二つの組織が殺し合いをするという事件が発生してしまった。
これまでに、既に十五件。
最初に起こったのは三週間前だった。
この二つの組織は先々代から同盟を組んでおり、今回の遺産問題は協力体制を取っている。単に遺産目当てでの殺し合いだったら話は簡単だが、付き合いが長い仲では少々考えにくい。
「二組織とも古くから存在するが、力はそこそこといったところで、大規模でもない。縛り上げるのは苦労せんだろう」
「でも、僕達が介入していいンですか?火に油を注いでるような気もするんですが」
谷崎の言葉は尤もだ。
けれどそれよりも、異能特務課が恐れる事があったのだ。
それは太宰がいち早く気づいている。
「谷崎くんに質問。このような内部争いは周りにどんな影響を与えると思う?」
「え。うーん……」
「例えば、社長と国木田くんが喧嘩したとしよう」
「社長を相手に喧嘩などするか」
間髪入れずに言う国木田に「例えばだよ、例えば」と苦笑する。
「話を戻すね。喧嘩してるってことは空気がピリピリ状態ってわけだ。さて、周りはどんな風に思うか。敦くん、鏡花ちゃん」
突然指名された二人は瞬きする。
数秒考え、敦は困ったように笑った。
「それはもう…おなかが痛いです」
「空気が重くなる」
「そうだね。特に二人のように組織の中で権力を有する人達が衝突すれば、周りは不安に駆られ、その空気は全体に広がるのだよ」
あ、と呟きが聞こえた。
谷崎は目を見開き、開いたままの口をそのまま動かす。
「周りも、殺し合いを始める…?」
「正解」
長引けば長引くほど、不安は煽られ、空気はさらに悪化する。やがてそれは疑心暗鬼に変わっていき、同じような事が起きてしまうのだ。
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RANA(プロフ) - ゆかりさん» 遅くなりましたが続編で来ました!続編でも読んでいただけたら幸いです。 (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - ゆめのあきさん» そう言って頂けて嬉しいです!ありがとうございます (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり - 続き待ってます (2021年7月23日 16時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのあき(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです! 更新楽しみにしてます! (2021年7月15日 1時) (レス) id: e1a96e1817 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - らむくんさん» そうなんです……シリアスをシリアスにできずに本当に申し訳ないです切腹 (2020年8月14日 1時) (レス) id: 37ff009e06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb
作成日時:2020年8月2日 13時