第拾肆話、休日 ページ15
「晶子さん…まだ行くんですか?」
「勿論さ」
表情が引き攣るAに、与謝野はにっこりと笑った。
休日の昼下がり。
うずまきでのバイトがなかったAはショッピングモールを訪れると、非番の与謝野と偶然会った。
そこからの流れは早かった。
挨拶を交わし、去ろうとするAをしっかりと捕まえた与謝野は「ちょっと付き合いな」と誘った。Aは断る暇もなく、いとも簡単に主導権を奪われてしまった。
あれよこれよと店を巡っては買い物をし、Aの両手には紙袋が三袋もある。
適当に理由を言って抜けようと考えていたが、諦めた方が良さそうだ。
Aは肩を竦め、「仰せのままに」と荷物を持ち直した。
あれから数店回り、気が済んだ与謝野と荷物が増えたAはショッピングモールを出た。すれ違う人々からチラチラと視線を向けられたが、ショッピングモール内でもあったので慣れてしまった。
「折角の休みに付き合わせたからねェ。なんか奢るよ」
「お、マジですか。じゃあうずまき行きましょう。珈琲飲みたいです」
隣を歩くAの表情が綻ぶ。
対して、与謝野はどこか納得いっていないようだ。不満そうにも見える。
数秒の間が空いた後、与謝野は腕を組みながら訊く。
「欲しい物は?」
「欲しい物、ですか?ないですけど…どうしたんです、突然」
「アンタから
乱歩を通して探偵社の面々と知り合ったAはうずまき以外でもこうして買い物に付き合ってくれたり、太宰捜しに協力してくれたり、色々あった後の片付けを手伝ってくれたり……と、世話になったことも多い。
その後誰かが「お礼に何か奢るよ」と言っても物を欲したことがないのだ。
最初の内は断っていたが、仲が深まるうちに昼食や夕食、酒などを奢ってくれと言われたことはあっても、やはり物はない。
誕生日でさえ。
付き合いが長い仲で遠慮するような性格ではないにせよ、与謝野は年上で、女性だ。やはり遠慮してしまうのか、と少し心配になり、この機会に尋ねたのだ。
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RANA(プロフ) - ゆかりさん» 遅くなりましたが続編で来ました!続編でも読んでいただけたら幸いです。 (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - ゆめのあきさん» そう言って頂けて嬉しいです!ありがとうございます (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり - 続き待ってます (2021年7月23日 16時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのあき(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです! 更新楽しみにしてます! (2021年7月15日 1時) (レス) id: e1a96e1817 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - らむくんさん» そうなんです……シリアスをシリアスにできずに本当に申し訳ないです切腹 (2020年8月14日 1時) (レス) id: 37ff009e06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb
作成日時:2020年8月2日 13時