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鍵のない扉とは。 ページ45

No side


六年前。


「あの院長は君の異能力を誤解している」


澁澤は優しい声色で言った。


石壁に覆われた地下室に、高い位置に設置された窓から夕陽が差していた。
室内には大型の医療器具や計器があり、異様な雰囲気を放っている。

最も異様なのは、中央の椅子に座らされた少年だ。
手足を拘束器具で固定されていた。

恐怖に震えながらももがいてみるが、拘束が解ける気配はない。


「君の異能力は世界でも稀な存在...異能力者の欲望を導く、唯一の異能だ」


抵抗を続ける少年を無視し、澁澤は語り続ける。


「だが、若さ故なのか、その異能は君の奥深くに仕舞い込まれていて、私の霧でも取り出すことができない」


「だからね」と口元が歪む。

赤い瞳が爛々と輝き、怪しみに満ちている。


「これは君の為だ」


そう言った直後、手元にある装置のボタンを押した。
途端、少年が座る椅子に強い電流が走った。


絶叫が室内に響く。

けれど拘束されていて、椅子から、電流から逃れることを許さない。

凄まじい痛みを表すかのように、ただ悲鳴を上げ続ける。


澁澤は口元を歪ませたまま、少年を見た。


「さあ、私に驚きを与えてくれ」









白い扉の前で、敦はただ立っていた。


この扉には鍵はついていない、と先程院長は言っていた。

この先に何があるか知りたいのに、恐怖がそれを遮っている。


尽きることのない疑問と恐怖。


そんな時、耳を貫くような絶叫が聞こえてきた。

驚いて顔を上げる。
聞こえてきたのは、扉の向こうだ。


__迷っている場合じゃない。


敦は両手を扉に当て、力を振り絞って押す。
鈍い音を立てながら扉は開いていった。






扉の先に見えたのは何処かの地下室。

そしてその中央の椅子に座る、悲鳴を上げる少年は__









中島敦(自分)だった。

閉ざされた過去とは。→←本当の主催者とは。



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美喜 - すみません!冗談が上端になってます。 (2018年9月11日 20時) (レス) id: abfcbd5bcc (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - さくら海さん» わざわざありがとうございます!直してきますね (2018年9月4日 11時) (レス) id: 4350057b28 (このIDを非表示/違反報告)
さくら海(プロフ) - 誤字を見つけたので、すみません!昨日の影踏み、が、いのうになってます! (2018年8月30日 21時) (レス) id: 3420adefd8 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - 表情筋ニートさん» こちらこそ、読んていただきありがとうございます!心のオアシス「参謀とは。」頑張ります笑 (2018年8月21日 13時) (レス) id: 6db7f9f3bc (このIDを非表示/違反報告)
表情筋ニート(プロフ) - 面白い作品ありがとうございます。私も文ストのアプリやってます。どのキャラクターも可愛くて、かっこよくて、心のオアシスですwこの作品も私の心のオアシスのひとつです!これからも応援しています。更新頑張ってください! (2018年8月17日 0時) (レス) id: 2d1443bf10 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb  
作成日時:2018年3月27日 0時

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