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六年前とは。 ページ3

No side


赤い満月が浮いていた。


枯葉が風に乗り、地面へ落ちる。


織田作之助は小走りで目的地へ向かっていた。

時折銃声が聞こえてきた。
銃を握る手が無意識に力を強めた。


角を曲がると大通りに出た。

一面と言っていい程の死体、薬莢、血の水溜まり。


「うんざりだな」


小さくため息をついた。


ふと、織田の耳に引っかかるものがあった。


声だ。しかも子どもの。


聞こえる方へ行ってみると、横転した車が目に留まった。
近くに人が倒れている。

銃を仕舞いつつ駆け寄った。

一般人の夫婦が息絶えていた。


その真ん中に、幼い少女が守られるようにして抱かれていた。

織田の探していた声は、この少女だった。


少女を抱き上げ、怪我がないか確かめる。

無いことが判ると、安堵のため息が口から零れた。


「こんな状況で生きてるとは、運がいいな」

「織田作」


呟くと同時にインカムから流れてきた。

太宰治だ。


「太宰、何処だ」

「何してるか大体察しがつくけど、早く逃げろ。そこもすぐ危険になる」


早口で告げてきた。


ザザッと雑音が混じる。

もう一方からの通信が割り込んできた。


「引っ込んでろ、サンピン!」


太宰とは違う声だ。


直後、背後から単車が織田のいる場所を豪速で抜いた。


運転しているのは黒帽子を被った少年__中原中也だ。

乱暴にスロットルを回し速度を上げる。


「ハーイ、中也。敵の射程距離に入ったから、弾受けて死んでね」

「うるせェよ」


太宰の巫山戯た物言いに低い声で返す中也。

二人の仲の悪さは、戦場でも変わらないらしい。


再びザザッと音がした。


『太宰、それ私にも死ねって言ってる?』


不機嫌そうな声は、インカムからではなく中也の後ろから聞こえてきた。

上司と部下とは。→←序章とは。



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美喜 - すみません!冗談が上端になってます。 (2018年9月11日 20時) (レス) id: abfcbd5bcc (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - さくら海さん» わざわざありがとうございます!直してきますね (2018年9月4日 11時) (レス) id: 4350057b28 (このIDを非表示/違反報告)
さくら海(プロフ) - 誤字を見つけたので、すみません!昨日の影踏み、が、いのうになってます! (2018年8月30日 21時) (レス) id: 3420adefd8 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - 表情筋ニートさん» こちらこそ、読んていただきありがとうございます!心のオアシス「参謀とは。」頑張ります笑 (2018年8月21日 13時) (レス) id: 6db7f9f3bc (このIDを非表示/違反報告)
表情筋ニート(プロフ) - 面白い作品ありがとうございます。私も文ストのアプリやってます。どのキャラクターも可愛くて、かっこよくて、心のオアシスですwこの作品も私の心のオアシスのひとつです!これからも応援しています。更新頑張ってください! (2018年8月17日 0時) (レス) id: 2d1443bf10 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb  
作成日時:2018年3月27日 0時

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