二人だけの時間とは。 ページ35
No side
Aが向かった先は古びた貨物倉庫だった。
自身の倍はある扉を横に滑らせようとするが中々動かない。
相当錆びている様だ。
両手に力を入れると、金属特有の鈍い音を響かせながらやっと開いた。
中に入ると埃っぽい匂いが鼻についた。
天井は低い方で、蛍光灯は弱々しい光を放ち、壁には様々な管が伝っている。辺りにあるのは色褪せた大型のコンテナや積まれた大小それぞれの木箱。
近くの木箱の上面を指で撫でれば、埃が指にたっぷりと付いた。
長い間使われていない事が判る。
指に付いた埃を払った直後、向こうから気配がした。
視線を向ければ、コンテナの薄い影から黒い塊が現れ、それは徐々に人の形を創った。
『はぁい、異能ちゃん。また会ったね』
へらりと笑って手を振る。
矢張り反応は無い…と思いきや、異能はゆっくりと手を挙げた。同時に、影の中から真黒な薙刀が顕現された。
刹那、バキィッと破壊音がした。
木片や埃が舞う。薙刀を振り下ろした其処には、粉々になった木箱が虚しく散っていた。
『いや〜、危ない危ない』
頭上から降ってきた声。
数個積み上げられた大型の木箱の上で、Aは足を組んで座っていた。
『"牛若丸"っていう呼び名、案外気に入っていたんだよね』
あの一瞬の間に自身と小型の木箱をすり替え、乗り移ったのだ。
なんという瞬発力と身軽さだろう。
異能はAを睨むようにして見上げる。対してAは、異能の反応が面白いと言わんばかりにくすりと笑った。
『…さっき君は私に言ったね』
___「貴女に"闇の支配人"の名は似合わない」___
『確かにそうかもしれない。私は今も囚われ続けてる』
何処か憂いを帯びた声でぽつりと呟いた。
「よっ、と」と立ち上がり、異能と向き合った。
『此処なら邪魔も入らない。私達二人きりだ』
妖艶な笑みを浮かべて自身の異能を見下ろす。
深い金色の瞳が、霧の上にある満月のように爛々としている。
『さぁ、異能ちゃん。お遊びの時間だ』
しゅるり、とネクタイを緩めた。
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RANA(プロフ) - 月影のアリスさん» え、あ、え、い、いいんですか!?(( それはもうぜひ!!お願いします!!! (2020年1月29日 0時) (レス) id: 96770a17e2 (このIDを非表示/違反報告)
月影のアリス(プロフ) - 徳永ちゃん描かせていただいてもよろしいですか? (2020年1月28日 21時) (レス) id: 8ac6197a54 (このIDを非表示/違反報告)
紅翡翠(プロフ) - RANAさん» どうぞどうぞ載せてください!!キャラメル気がついて頂けたんですね(〃▽〃)更新頑張ってください! (2019年9月19日 0時) (レス) id: a6376c4245 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - 紅翡翠さん» おにぎり食べてドヤ顔してる徳永めちゃ可愛いです!ポケットにはさりげなくキャラメルが…!ありがとうございます!!もしよろしければ小説にのせてもいいでしょうか? (2019年9月19日 0時) (レス) id: 96770a17e2 (このIDを非表示/違反報告)
紅翡翠(プロフ) - RANAさん» http://uranai.nosv.org/img/user/data/4/a/2/4a22a73a582ac871202ccf3647d37b53.jpegこっちがアナログです!http://uranai.nosv.org/img/user/data/1/3/0/130135aa9b79aa3a66aefa33239f3ca0.png2枚目はデジタルです!拙い絵ですいません…々上手く貼れてますかね? (2019年9月18日 15時) (レス) id: a6376c4245 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb
作成日時:2018年12月18日 0時