陸拾幕 ページ15
「起きろ、A」
Aの銀色の瞳が開かれる。
ハッとした表情で、無意識に伸ばしたのであろう手を見つめた。その手を、煉獄が優しく包んでいる。
だが、それに浸っている猶予はない。
Aは立ち上がり、煉獄は飛びのいた。
その瞬間、床を肉のような塊が貫く。
眠る前よりも、列車全体の厭夢の気配が強くなっていた。
炭治郎、伊之助、善逸、禰豆子の姿はないが、場所こそ散らばっているものの前方にいる。
辺りを一瞥したAはすぐに状況を理解した。
「うーん!うたた寝している間にこんな事態になっていようとは!!」
『すみません。情報を吐かせて斬るつもりだったんですけど』
「謝るのは俺の方だ。柱として不甲斐なし!!穴があったら入りたい!!」
車両の肉塊を斬っていく。
だが、時間が経てばそれは再生するのでキリがない。元凶である厭夢を斬らない限り、この状況は永遠に続く。
煉獄は瞬時に思考をまとめた。
この汽車は八両編成。
後方の五両は煉獄とA、前方の三両は善逸と禰豆子を守護。炭治郎と伊之助は三両の状態に注意を向けつつ、厭夢の首を斬るという計画だ。
実体がなくとも急所は必ずある。
こちらも探りながらやっていけば、道筋は見えてくるだろう。
Aに計画を伝えると、了承の返事が返ってきた。
「では、俺は今のを彼等に伝えてこよう!その間は任せた!」
『はい』
Aが駆け出す。
隣の車両に移る直後、「A!」と名を呼ばれた。
「これが終わったら、俺の家に行くぞ!」
返事を聞く事もなく、煉獄は派手な音を立ててその場から消えた。
呆気にとられるAだが、相変わらずだ、と苦笑を浮かべる。どうやら断っても聞きいてくれそうにない。
彼の人柄は変わらない。
帰る場所を失くし、蝶屋敷で世話になる事になったAを街に連れ出したり、茶に誘ったりして元気づけようとした。鬼殺隊への入隊を希望した際には誰よりも厳しく熱心に教えた。
手を引き、笑みを浮かべるその姿は、少しだけ優真を想わせた。
『さつま芋、いくつ持っていこうかなあ』
そう零すAの背後に肉塊が迫る。
手に握られた日輪刀の唾が、一瞬だけ白く煌めいた。
"雪の呼吸・壱ノ型_初雪"
肉塊が消える。
直後、四方八方から肉塊が再び襲う。
だが、届かない。
"雪の呼吸・伍ノ型_吹雪"
豪速の連続攻撃で、全ての肉塊が虚しく消えた。
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RANA(プロフ) - 姫歌@暫く浮上出来ませんさん» ドはまりしました!!よかったら読んでくださいな。また語り合おう (2020年3月11日 21時) (レス) id: 37ff009e06 (このIDを非表示/違反報告)
姫歌@暫く浮上出来ません(プロフ) - RANAちゃんが、鬼滅を書いている!私も鬼滅ハマりました…また、お話ししてください (2020年3月10日 13時) (レス) id: 032e885983 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb
作成日時:2020年2月22日 13時