【文スト】参謀とは。7

化けた鼠とは。 ページ5

No side


爆発音が路上で響いた。
車だったものから濛々と黒煙が上がっている。

その近くには、人が浮いていた。


「もう、さいあく」


右手に車の片扉(ドア)、左手に森の白衣を襟首を掴むエリスだ。
燃える車を睨むかのように見下ろしている。

そんなエリスの方に森は首だけを動かして向いた。


「あ...ありがとエリスちゃん。でもく、首」

「あっそ」

「痛いッ」


とても呆気なく手を離した。
森は腰から地面に勢い良く落ちる。

中年に容赦ねぇな。
...いや、森だからか。


「"ありがと"なんて全然嬉しくないんだもん。だってリンタロウがあたしを操って助けさせたんだし」

「ごめんよう。でもエリスちゃんは私の異能だから」


身体を起こしながらそう言う。

どうやら腰は大丈夫そうだ。


ムキーッとエリスが起こっているのを背後で聞きながら服に付いた汚れを払う。

辺りを見渡してみれば、人が多く集まっていた。


そさくさと立ち去ろうとエリスの肩を押す。


「すごい野次馬の数だ。少し目立ち過ぎたねぇ」

「何の騒ぎですか！」


人の波から、男が声を上げて現れた。

黒い制帽と水色の生地の制服を見たところ、警官らしい。


「車が爆発したとの通報が...」

「いやぁお巡りさん、ご心配なく。うちの子が車の燃料槽(タンク)にオレンジジュースを混ぜただけです」


とんでもない言い訳を言い出した。
遂に頭の中がお花畑になってしまったようだ。

案の定、エリスの顔には「そんな訳ねぇだろ」と書かれている。


「はぁ...事故ですか。では、お怪我はないのですね？」

「えぇ、この通りピンピンです」





「それは困りましたね」





ドスッという鈍い音。
一気に近くなった男との距離。
そして腹部の痛み。


身体が後ろへ傾くと同時に、森は男の制帽を払い取った。

一瞬だけ、紫水晶の瞳と目が合う。


地面に手をついた時、男は素早く制帽と取ってその場を去った。


「お前は......エリスちゃん！！」


すぐに向かわせたがもう遅い。
男の姿は見えなくなってしまった。


「成る程...多すぎる野次馬も彼の仕込みか......」


身体の力が無くなり、とさりと地面へ横たわる。


薄れる意識の中に浮かぶのは、喧嘩中のポートマフィア参謀(愛おしい娘)。


「済まないね...Aちゃん」

叩きつけられた現実とは。→←幼女からの謝り方講座とは。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す