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「窓、修復されたんですね。お早いことで」
「…………あんたここ、四階やで」
「執務室の鍵が閉まっておりましたので窓から失礼いたします」
洗濯を終え、他のメイドさん方のお手伝いをしたあと。トントンさまの様子を見に彼の執務室へと向かえば何故か扉の鍵が閉められていた。私を中に入れたくなかったのかもしれない。
そんな訳で、私は初日と同じように窓からひょっこり、失礼させていただいた。綺麗に修復された窓をそっと開き、中へと入るとトントンさまは振り返りもせずに深いため息を零す。
「どうやって登ったん?」
「いえ、普通に屋上の洗濯物干場に鉤を掛けてロープでスルスルと降りてきたのです」
「普通とは」
「私にとっては普通と言えます」
「嫌やこんなスパイみたいなメイド……」
「失礼な。大体部屋に鍵をかけているトントンさまがいけないんですよ。次からは開けておいてくださいね、窓から入るのも楽ではないので」
ロープはあとで回収するとして。散乱する書類を踏まないよう注意しながらそっと執務室の床に足を下ろす。
「……そもそも何しに来てん」
「生存確認に」
「お気遣いどうも。この通りピンピンしとるから、…っ!?」
手元の書類から一秒たりとも視線を外そうとしないトントンさまの顔をぐぐっと横から覗き込む。すると何故か肩を跳ね上げた彼は椅子ごとひっくり返りそうな勢いで背中を仰け反らせた。
「っち、かいわ、あほ」
「……おや、見かけによらず可愛らしい反応をなされる。女性に接近されるのは苦手ですか」
「うっさい…急に近づかれたら誰やって驚くやろが」
「んは、そうですね。そういう事にしときましょ」
明らかにたじろぎ視線を泳がせるトントンさまをくすくすと笑って離れる。顔色を確認したかっただけなのだけれど、覗き込んだお顔は今朝より優れないような。本日の業務は絶対に夕飯頃には切り上げさせよう、そう心に決めて執務室の扉の向こうに待機させていたワゴンを運び込む。
「トントンさま、珈琲をお持ちしたのでお昼前に一度ご休憩されてはいかがですか」
「……せやな」
「砂糖は要ります?」
「いらへん」
「お疲れの時はブラックより甘いカフェオレの方が休まると思いますけどね」
「……」
「砂糖、いかがです?」
「……おん」
ころり、ずっと彼の手に握られていたペンが執務机に転がる。トントンさまは頑固、という訳でもない。またひとつメモを記憶して彼に甘いカフェオレを差し出した。
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紫紅兎(プロフ) - 夢主ちゃんのキャラがちょうどいい感じに濃くて素晴らしいですね!tntn様との絡みも大変微笑ましいです…過去に何があったのかも楽しみで色々考察しちゃいます、読むたびにマフィアパロって良いなぁと堪らなくなります、更新楽しみにして待ってます (2021年7月3日 1時) (レス) id: fcae62d2ac (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - あの………語彙力ないので簡潔にまとめるとですね……………とっっっっっても好きです。 (2021年5月27日 19時) (レス) id: 19366b94fd (このIDを非表示/違反報告)
リュウ - ヤベェおもしれぇですよ(?)更新頑張って下さい!!!!好きです!!! (2021年5月24日 22時) (レス) id: fa1fb43e66 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 夜空さん» 夜空さん、コメントありがとうございます~~! かなりキャラが濃い夢主ちゃんなので尊いとまで言っていただけてとっても嬉しいです! ゆっくりではありますが更新がんばります~~! (2021年5月16日 20時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
夜空(プロフ) - ゆゆゆゆゆ夢主ちゃんが尊い(*´ω`*) そうゆう性格の女の子の方が私は好きだよ←(何目線??)更新頑張って下さい!!!!! (2021年5月15日 17時) (レス) id: 947663e2d0 (このIDを非表示/違反報告)
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