独占、掌握、劣勢 ページ41
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あーあ。あんなに楽しみにしてたのにドラマの内容なんてちっとも頭に残らなかった。全部トントンのせい。
ソファーの背もたれにだらりと沈みながら隣を盗み見れば、はなからドラマなんて興味がなかったらしい彼が同じく座ってスマホのソシャゲに夢中になっているのが見える。
画面を見下ろす横顔は真剣そのもの。恋しろと迫る私にだってそのくらい真剣に向き合ってくれたらいいのに。
｢お前の好きな俳優出とったのにえらく静かやったな｣
｢え？｣
｢いつもならぎゃあぎゃあ騒いどるやろ。ドラマに集中せんで、何考えとったん？｣
トントンが横目でこちらを見る。口元が緩んでいるあたり彼のことで頭がいっぱいになっていたのはお見通しらしい。わざとらしく首を傾ぐ彼にべえっと舌を見せてそっぽを向けば、くすくす小さな笑い声がCMの合間に響いた。
｢……今日のとんとん、変だよ｣
｢お前が柄にもなくヤキモチなんてするから、ちょっと可愛くみえてもうて｣
｢毒キノコでも拾い食いした？｣
｢かも｣
ああ、それなら納得。この食いしん坊め。なんて余計なことを考えて冷静さを取り戻そうと必死だ。私は必死なのに、彼は驚くほど穏やかな声色で話すからこの差が何とも腹立たしい。揶揄われてる、そう分かってても仕返ししてやる気も起きないくらいには参っていた。私の頭を占領するな、トントンのくせに。
｢なあ、今日はいつもみたいに鬱陶しくひっついてこうへんの？｣
｢うぇっ！？｣
突然伸びてきた手が私の手首をきゅっと掴んで引っぱる。膝を抱え込んでいた私は力負けしてぽすり、彼の肩に倒れ込んだ。
鼻を擽る石鹸の匂い、ぴんと背筋を伸ばして固まる私を笑う声、暑いくらいの体温。全部が私の思考をぐるりと混ぜっかえして、最後には羞恥となって固まった。この間まで立場は逆だっただろう、される側の気持ちを今知った。きゅうと縮こまる胸が苦しくって堪らないや。
｢……トントン、私のことすきでしょ｣
｢好きか嫌いかなら、まあ確かに｣
｢恋だよ、それ｣
｢ちゃうけど｣
｢……意地張んな、ばか｣
｢そっくりそのまま返すで、ばか｣
認めたら、負け。お互いじりじりとぶつけ合う視線の先にあるのは赤い顔。ふたり揃って同じ顔して意地張って、知らないふり。
私だっていい歳した大人だ。ここまで来たら流石にもう…いや、口に出すまでは負けじゃない。そう必死に言い聞かせ続けるのだ。まだ、この気持ちの名前は知らない。劣勢なだけ。
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るな？ - 序盤のほうからめっちゃ泣けてました！ドキドキもあるけど感動って作者様神ですか！？ (2022年3月5日 2時) (
レス) @page50 id: 12ba396496 (このIDを非表示/違反報告)
猫大好き - めっちゃ遅れました。完結、おめでとうございます!!私も、成功するかわかんないけど好きな人に、好きって言う勇気が付きました。ありがとうございます!! (2021年2月3日 19時) (レス) id: 932515d6d7 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - もちたさん» もちたさん、こちらこそ最後までお付き合いいただきましてありがとうございます〜！みんなドキドキしてくれ！の精神で書きなぐっていたのでそう言ってもらえてはちゃめちゃに嬉しいです…！本当にありがとうございました！ (2021年1月28日 22時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - ネこさん» ネこさん、コメントありがとうございます〜！イッキ見！楽しんでいただけたようでとっても嬉しいです…！最後までありがとうございました！ (2021年1月28日 22時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
もちた - ちょっと遅れてしまいましたが、完結、おめでとうございます...!こんなにドキドキできた作品は初めてです...本当に...ありがとうございます(た)...! (2021年1月26日 20時) (レス) id: d31df64977 (このIDを非表示/違反報告)
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