壊せない壁 ページ12
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リビングへと戻ってきたトントンの声を聞き立ち上がり、私は右手にパンツを引っ掴んだまま彼へと詰め寄った。そうして｢なに？｣と首を傾げる彼の襟首に左手をかけ、ぐっと引き寄せる。彼は私よりずっと背が高いから、つま先立ちで。
眼鏡の奥で真っ赤な瞳がふたつ、見開かれる。その鮮やかな赤は小さい頃から変わらないな、なんてぼんやり思いながら、間抜けに開いた彼の口に自身の唇を寄せる。あ。リップ塗ればよかった、と冷静に後悔するくらいには余裕たっぷりの心を持って。
｢⎯⎯⎯っんぶ、｣
｢……な、にしようと、した？｣
しかし、悲しいかな。ふたりの僅かな隙間に突如割り込んできたトントンの大きな手によって、それは未遂に終わってしまった。口を塞がれ、困惑しきった顔が私を見下ろす。
｢なにって、キスだけど｣
｢は、？｣
邪魔をする彼の手を掴み退かし、それからひとつため息を零す。幼馴染はしない、恋人はする。そんなキスをしてやれば、この鋼の意思を持った男も少しは心を揺らがせてくれるかと思ったのだけれど。
｢……そんなに嫌？｣
｢……順序があるやろ｣
｢じゃあ付き合ってよ｣
｢いやや｣
拒絶に拒絶。なんだか胸が痛い。
浮かせた踵をおろし、俯く。襟首を掴んでいた手は力なく降ろし、額は彼の胸元にそっと寄せた。それでも彼の宙ぶらりんの手が私を恋人のように抱くことはない。幼馴染、だから。
｢……お風呂、あと二十分だっけ｣
｢おん｣
｢じゃあそれまでに片付け⎯⎯⎯｣
胸の痛みを誤魔化すように無理やり話を逸らす。そうしてこんなことでしょげるな、と泣き出しそうな自分に叱咤し、顔を上げたその時。
はっと、目を見開いた。
⎯⎯⎯なんで、顔真っ赤、
｢っ、お、い、見んな｣
｢うわっ｣
目が合うと同時に今度はトントンの手が私の目をすっぽりと覆い隠した。しかし、手遅れだ。私は確かに見てしまった。驚くほど真っ赤に染まっていた彼の顔を。
｢……えっ｣
｢……なんやねん｣
｢……いや、流石童貞…っあだ！？｣
｢飯抜き｣
いやまさか、そんな顔をされるなんて。動揺を隠すためにいつもの調子で彼を小馬鹿にすれば、目を覆っていた手が私の額をぺしんっ！とはたいた。
……あの拒絶は、照れ隠しだったんだろか。
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るな？ - 序盤のほうからめっちゃ泣けてました！ドキドキもあるけど感動って作者様神ですか！？ (2022年3月5日 2時) (
レス) @page50 id: 12ba396496 (このIDを非表示/違反報告)
猫大好き - めっちゃ遅れました。完結、おめでとうございます!!私も、成功するかわかんないけど好きな人に、好きって言う勇気が付きました。ありがとうございます!! (2021年2月3日 19時) (レス) id: 932515d6d7 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - もちたさん» もちたさん、こちらこそ最後までお付き合いいただきましてありがとうございます〜！みんなドキドキしてくれ！の精神で書きなぐっていたのでそう言ってもらえてはちゃめちゃに嬉しいです…！本当にありがとうございました！ (2021年1月28日 22時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - ネこさん» ネこさん、コメントありがとうございます〜！イッキ見！楽しんでいただけたようでとっても嬉しいです…！最後までありがとうございました！ (2021年1月28日 22時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
もちた - ちょっと遅れてしまいましたが、完結、おめでとうございます...!こんなにドキドキできた作品は初めてです...本当に...ありがとうございます(た)...! (2021年1月26日 20時) (レス) id: d31df64977 (このIDを非表示/違反報告)
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