形勢逆転、とはいかない ページ33
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｢……い、痛みのせいで、どきどき、半減｣
｢で？｣
｢……っす、するか、ばあか！｣
｢いだっ、！？｣
うそ、しんじゃいそうなくらい、どきどきした。
照れ隠しに頭突きの仕返しをくれてやる。こんなのってずるい、ずるすぎる。だって不意打ちだもん。いくら幼馴染でも、額でも、不意をつかれたら堪らない。さっきまで全力で拒否してたくせに、なんなんだ。
｢なんや、してくれへんの｣
｢しない！検討はずれだった！だいたい私が今更キスされたくらいで好きになるわけないじゃんね！｣
｢はは、そうかもな｣
｢だから、｣
｢でも、こっちならどうなん｣
｢は、｣
身体を起こしたトントンは後頭部に添えているのと反対の手で私の腰を抱きすくめていた。そんな彼と、鼻先がぶつかり合う。瞬くまつ毛すら触れそうな距離で視線が絡んだ。 あ、口にきす、されちゃう。
｢っす、とっぷ、｣
｢んむ、｣
咄嗟に距離を詰める彼の口を手で阻んだ。ぐぐ、と押し返せば、私を捉えたままの赤瞳がふっと細まる。
｢っふは、たまにはええな。お前にそんな顔させんのも｣
｢え、ぁ……？｣
｢情けないくらい顔、真っ赤やで。負かしてやった気になれてええわ｣
｢は、｣
手首を掴まれあっさりと口を塞いでいた手が離される。そうして鼓膜を揺するのは、愉しげな声。
⎯⎯⎯からかわれた。トントンなんかに、負かされた？
｢〜〜〜っ、ま、負けてないし！ばか！｣
｢ばかばか言う方がばかなんやで、ばかA｣
｢う、うるさいな！｣
勢いよく彼を押し退け、傍に転がしていた鞄をかっ攫う。｢負けてない！恋なんてしてない！ばあか！｣と犬のように吠えてから、私は玄関扉を開けて外へと飛びだした。
顔どころじゃ、ない。全身熱くって堪らない。心臓は何かが詰まったように苦しくって、頭に響くほどに鼓動がうるさい。
どきどき、してた。けれど負けず嫌いの私の口から出るのは下手くそな誤魔化しばかり。ほんと、こういうところが可愛くないのだろう。
｢……わかんないや。これが恋か、なんて｣
けれど何となく、恋に近いような気もしていた。だっておんなじなんだもの。心の底から好きだったあの彼と、初めてキスしたその瞬間感じた高鳴りと。
それと、去り際に私ははっきりと見た。余裕ぶって笑いながら、人のことなんて言えないくらいに顔を真っ赤にしていたトントンを。
⎯⎯⎯おんなじどきどき、してたのかな。
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違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るな？ - 序盤のほうからめっちゃ泣けてました！ドキドキもあるけど感動って作者様神ですか！？ (2022年3月5日 2時) (
レス) @page50 id: 12ba396496 (このIDを非表示/違反報告)
猫大好き - めっちゃ遅れました。完結、おめでとうございます!!私も、成功するかわかんないけど好きな人に、好きって言う勇気が付きました。ありがとうございます!! (2021年2月3日 19時) (レス) id: 932515d6d7 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - もちたさん» もちたさん、こちらこそ最後までお付き合いいただきましてありがとうございます〜！みんなドキドキしてくれ！の精神で書きなぐっていたのでそう言ってもらえてはちゃめちゃに嬉しいです…！本当にありがとうございました！ (2021年1月28日 22時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - ネこさん» ネこさん、コメントありがとうございます〜！イッキ見！楽しんでいただけたようでとっても嬉しいです…！最後までありがとうございました！ (2021年1月28日 22時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
もちた - ちょっと遅れてしまいましたが、完結、おめでとうございます...!こんなにドキドキできた作品は初めてです...本当に...ありがとうございます(た)...! (2021年1月26日 20時) (レス) id: d31df64977 (このIDを非表示/違反報告)
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