地獄より凱旋 ページ24
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社会人とは多忙なものである。必要最低限生きるための基礎的生活と、日々目まぐるしくも降ってくる仕事の数々。趣味や恋愛ごとに割ける時間は一日の中でほんのひと握りだ。
そんなわけで、私は地獄の月末月初に突入した一週間以上前からトントンの顔を見ていなかった。
｢っあ゛〜〜〜！！｣
｢っ、きゅ、うに叫ぶなやめろやなんやねんお前｣
｢やっと終わった！っていう歓喜の雄叫びだよ｣
｢傍迷惑やな。……というか、終わったのか｣
｢うん。あれ、もしかしてグルッペンより早く終わった？｣
｢……A。お前、やはり口を閉じて集中していれば優秀だな。口を閉じていれば｣
｢おつかれさまって言うところでしょ、ここ｣
立ち上がって勝利の右手を天井に突き上げた私を素直に驚いた、みたいな顔で眺めるグルッペンの額にデコピンをお見舞してやった。もちろん五倍の威力で返されたが、地獄から一足先に抜け出せた私は気分がいいのでそんな痛みも笑い飛ばせる。
｢よし。グルッペン、残ってるの手伝うよ｣
｢いや、いい。今手をつけているもので最後だ。俺がお前に大きく差をつけられるわけないだろう。さっさと帰れ｣
｢……たしかに。そんじゃあ、帰ろかな｣
窓の外はどっぷり、深い夜。時計はそろそろ日付を飛び越えそうで、大きな欠伸を隠しもせずに零した。
｢……あ、｣
｢うん？｣
｢明日、休みやろ｣
｢そうだね。私も君も｣
｢……む｣
｢……え、だからなに？｣
鞄に荷物を詰めていると、グルッペンが仕事の手を止めないまま顰め面を浮かべて口篭った。なに、むって。
｢……いや。どうせトントンのところに行くんだろ、お互い暇なやつらめ｣
｢あ。そういえば最近トントンの顔みてないなぁ。さっきなんか死ぬほど腹立つ顔した豚のスタンプ、LINEに送られてきてたけど｣
｢生存確認やろ｣
｢私、その辺で野垂れ死ぬような顔してる？｣
｢まあ｣
｢あ、そうなんだ｣
で、結局なんなの？ と聞いても、グルッペンは｢はよ帰れ｣と私の帰宅を急かすばかり。そっちが休みだろって聞いてきたのに。
わけわからん、とぶつくさ言いながら私は鞄を肩にかけた。さて、帰ろう。明日は休み。トントンの顔を暫く見ていない。……休み、かぁ。
｢じゃあ、お先。おつかれさま｣
｢ああ、お疲れ｣
オフィスを出て一歩、足が軽くなる。
(……俺はこんなに甲斐性なしだったか)
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違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るな？ - 序盤のほうからめっちゃ泣けてました！ドキドキもあるけど感動って作者様神ですか！？ (2022年3月5日 2時) (
レス) @page50 id: 12ba396496 (このIDを非表示/違反報告)
猫大好き - めっちゃ遅れました。完結、おめでとうございます!!私も、成功するかわかんないけど好きな人に、好きって言う勇気が付きました。ありがとうございます!! (2021年2月3日 19時) (レス) id: 932515d6d7 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - もちたさん» もちたさん、こちらこそ最後までお付き合いいただきましてありがとうございます〜！みんなドキドキしてくれ！の精神で書きなぐっていたのでそう言ってもらえてはちゃめちゃに嬉しいです…！本当にありがとうございました！ (2021年1月28日 22時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - ネこさん» ネこさん、コメントありがとうございます〜！イッキ見！楽しんでいただけたようでとっても嬉しいです…！最後までありがとうございました！ (2021年1月28日 22時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
もちた - ちょっと遅れてしまいましたが、完結、おめでとうございます...!こんなにドキドキできた作品は初めてです...本当に...ありがとうございます(た)...! (2021年1月26日 20時) (レス) id: d31df64977 (このIDを非表示/違反報告)
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