信じて、おやすみ ページ22
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夢の中で、何度も何度も謝り続けた。俺がもう少し早くAの元へと戻れていたら、護れたかもしれない。もしかしたら一緒に眠れたかもしれない。そしたら、彼女をひとりになんて、させなかったのに。
全てを思い出した。俺が逃げ続けてきたのは、Aを失ってしまったという現実だ。いつも傍で笑っていたAの姿は何処にもなくて、彼女の声や、匂いや、温もりがあんなに記憶していた筈なのに、日に日に自分の中から、一緒に過ごした場所から、薄れていっているのを感じて酷く怖くなった。
写真の中のAは愛くるしい笑顔を浮かべているのに、俺の名前を呼んではくれない。幾ら指でなぞっても触れる事はできない。そんな世界が耐え難くて、俺はこの、平行世界に閉じこもってしまった。
「……ん、…？」
いつの間にやら閉じられていた瞼を開ければ、視界には見慣れたリビングの風景が映し出された。
ああ、そういえばグルッペンと話している最中に眠ってしまったんだった、と思い出した時、ふと左手の温もりと、腕に寄りかかる重みに気付いて視線を向けた。
「……A、…眠っとるん？」
ソファーに座り、寄り添って眠るAがそこにいた。自分の中にぶわりと湧き上がった懐かしさや愛おしさに、彼女を映し出していた視界がにじむ。
何よりも大切だった。誰よりも愛してた。君が傍にいなくては、俺はこんなにも弱い男になってしまう。
一ヶ月もない短い時間だった。それでも、俺が求め続けたAの姿がこの世界にはあって、本当に幸せだった。でも、俺が愛した彼女はこの世界にはいない。きっと、俺の帰りを待っていてくれている。
眠る彼女をゆっくりと抱き寄せて、この温もりを二度と忘れないように記憶する。
ごめんな、もう忘れないから。もう逃げないから。
「……A、起きてや、…おきて、」
もう、殆ど身体に力が入らなかった。指先ひとつ動かすのも億劫で、瞼は今にも閉じてしまいそうな程に重たくて。
きっと、次眠ってしまったら、俺はもうこの世界で目覚める事はないんだろう。そんな気がして、力の入らない腕で必死に抱きしめて、そして彼女の背中を叩く。
最後に、伝えさせてほしい。あの日、護ってやれなかったこと、君を幸せにしてやれなかったこと、君を忘れて逃げたこと。その全ての謝罪と、
心から、愛してると。
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夜狐 - んもう好き……() (2021年7月3日 14時) (
レス) id: 587d00a7a2 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - すみれいんさん» すみれいんさん、まさかの周回ありがとうございます…！完結から日の経った今でもこの作品を読んでいただけていることが心の底から嬉しいです…！；；；； (2020年12月27日 1時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - 再び読みにきてもう、やっぱり好きです (2020年12月20日 20時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 宙さん» 宙さん、コメントありがとうございます〜！タイトルの意まで気づいていただけでとっても嬉しいです；；；；最後までありがとうございました！ (2020年9月2日 21時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - 神作。なんて素敵な終わり方なんだあ！題名の意味3か4シリーズぐらいでもしかしてって思ったけど感動したーー！なんて素敵な作品なんだ！！ (2020年8月27日 19時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
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