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「＿＿＿……や、……おきて、…」
微かに聞こえたその声は、弱々しく震えていた。ゆっくりと瞼を押しあげれば、目の前は真っ暗で。でも、身体を包み込む冷たさにはっとして顔を上げた。
「…泣いてるの？」
「…A、…？」
ぽたり、ぽたりと涙を落とすトンくんがそこにいて、そうっと彼の頬に手を添えその涙を指で拭う。
「おはよう、トンくん」
「…ッ、おはよ、A」
そう言うと、昔の彼はいつもぎゅうぎゅうと苦しいくらいに抱きしめてくれていたのに、今私を抱いてる腕には力が込められておらず、直ぐにでも解けてしまいそうだった。
でも、良かった、間に合ったんだ。彼に伝えなくちゃいけない事がある。これが、最後だと思うから。
「ねえ、トンくん。私ね、全部思い出したよ」
「俺も、思い出した。だから、先に言わせてほしい」
「…うん」
「ごめん。ごめんな、…俺、Aとの誓いも、約束も、全部守れへんかった。Aが隣におらん毎日が耐えられんくて、忘れてまでAのいる別の世界に逃げ込んだ。…最低やな。俺のこと、許せへんかもしれない。でも、」
「どうして謝るの？」
「え、？」
トンくんも、トントンも、勘違いしている。私は自分の弱さを恨むことはあっても、彼を責めたことなんて一度もないのだから。
「私、本当に幸せだったよ」
「っ、！」
「最期まで、幸せだった」
誓ってくれた幸せは、確かに私に与えられていた。それは、生まれ変わった今でも、ずっと。
「約束、破っちゃってごめんね」
「…っちが、う、俺が、」
「トンくん、…トントンと過ごした時間は、私にとって何よりも大切なものだった。貴方から貰った愛も、私は今でも覚えてる。だからね、泣かないで。隣に居ることは出来ないけど、私は傍にいるよ。また、トントンと出会える日を、…っ、待ってるから」
この世界に生まれて、私はまた彼と巡り会った。ずっとずっと、隣にいてくれた。だからね、きっとトンくんもまた、何処かの世界で一緒に笑い合える日が来る筈だから。
「だからね、安心して。私は誰よりも幸せで、誰よりもトントンのこと、愛してるから」
私はひとりなんかじゃないの。眠ってしまっても、トントンはこんなにも私を想ってくれている。それがどれだけ幸せなことか。
気付けば溢れ出していた涙を拭って、精一杯に笑顔を浮かべた。
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夜狐 - んもう好き……() (2021年7月3日 14時) (
レス) id: 587d00a7a2 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - すみれいんさん» すみれいんさん、まさかの周回ありがとうございます…！完結から日の経った今でもこの作品を読んでいただけていることが心の底から嬉しいです…！；；；； (2020年12月27日 1時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - 再び読みにきてもう、やっぱり好きです (2020年12月20日 20時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 宙さん» 宙さん、コメントありがとうございます〜！タイトルの意まで気づいていただけでとっても嬉しいです；；；；最後までありがとうございました！ (2020年9月2日 21時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - 神作。なんて素敵な終わり方なんだあ！題名の意味3か4シリーズぐらいでもしかしてって思ったけど感動したーー！なんて素敵な作品なんだ！！ (2020年8月27日 19時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
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