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ヒュッと頬を掠めた鋭い何かに驚き目を見開いた。私の目の前に広がっていたのは、人と人が怒声を上げて斬り合い、撃ち合い、そして倒れてゆく、そんな戦場とも言える光景。平和な世界で生きてきた私にとって、こんなにも人の血に染まった光景はゲームや映画の中でしか知らないものだ。
そんな非現実的な場所で私はカタリと膝を震わせる。すぐ目の前に現れた人が悲鳴を上げ、ゆらりと私の方へ倒れ込んだが彼は私の身体をするりと抜けてそのまま地面へと伏せった。
夢の中だから、私の存在は此処にある訳では無い。そう分かっていても、あの日確かに私はこの場所で戦い、そして怯えていて、その時の感情まで自分の中に蘇っていくものだから怖くて、怖くて仕方がなかった。
「＿＿＿ッA！一旦下がれ！」
ふいに自分の名前が何処かから呼ばれ、慌てて視線を巡らせる。そして激しい戦闘の中見つけた二つの影に、私は震える膝を叩き駆け出した。
瓦礫の裏に身を潜めた二人＿＿この世界のトントンと私は肩で息をし、その身に目を瞑りたくなる程の赤色を浴びている。そんな二人の傍に私もしゃがみこみ、そして耳を劈くような戦闘音に邪魔されながらも交わされる会話に聞き耳を立てた。
「怪我は？」
「特には。トントンも、大丈夫そうだね」
「当たり前や。…それより、さっきの応援要請聞いたやろ。それっきり他の幹部とも通信が取れへん。…どう、するか」
「どうって、ひとつしかないでしょ」
「……」
ああ、そうだ。この時私たちの状況は最悪な方に向かっていて、更にグルッペン達のいる城が襲撃されてしまったのだ。ロボロから応援要請を受けて、でも他の幹部達との通信手段が絶たれてしまい現状把握が出来ないでいた。
城に一番近い持ち場に居たのが私達で、向かうとすればトントンしかいないと私は思っていた。私よりも足が速いし、何より的確で冷静な判断力は彼の方が圧倒的だ。どんな状況に立たされようとも、彼なら国を守る為の最良の選択が出来る。それを私は身をもって知っていたから。
「トントン、私が絶対にここを護るから。だから、行って」
「ッけど、」
「大丈夫。私、もうひとりでも戦えるよ」
戦う事が怖くて、剣を握るだけでも手が震えて。そんな弱くて情けない私をトントンはずっと傍で護り続けてくれていた。そんな彼が大好きで、同時に甘えてばかりの自分が嫌いになって。
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夜狐 - んもう好き……() (2021年7月3日 14時) (
レス) id: 587d00a7a2 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - すみれいんさん» すみれいんさん、まさかの周回ありがとうございます…！完結から日の経った今でもこの作品を読んでいただけていることが心の底から嬉しいです…！；；；； (2020年12月27日 1時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - 再び読みにきてもう、やっぱり好きです (2020年12月20日 20時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 宙さん» 宙さん、コメントありがとうございます〜！タイトルの意まで気づいていただけでとっても嬉しいです；；；；最後までありがとうございました！ (2020年9月2日 21時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - 神作。なんて素敵な終わり方なんだあ！題名の意味3か4シリーズぐらいでもしかしてって思ったけど感動したーー！なんて素敵な作品なんだ！！ (2020年8月27日 19時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
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