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「…っ、駄目や、お前を置いては行けへん」
「もう、心配し過ぎだよ。私、これでもゾムの部隊に居たんだからやれば出来る子って知ってるでしょ？」
そう言って笑った彼女が立ち上がり、トントンに背を向ける。両手に握られた剣の一本は欠けてしまっていて使い物になりそうにもなく、それを少し寂しそうに見た彼女はそれを腰に提げる鞘へと押し込んだ。
「トントン、早く」
「…ッ必ず、戻るって約束する。だから、頼む。お前も約束してくれ」
「……」
「ちゃんと、俺の事待っとって。俺の剣、ここに置いていくから。折れてもいい。必ず生きて、俺に返してくれ」
「……狡いなぁ、それ。なら、私もひとつ渡していい？」
困ったように笑った彼女は、胸元から何かを引っ張り出し、それを力任せに千切った。手の中でキラリと光る二枚のプレートは、兵士にとってとても大切な認識票。その内の一枚をトントンへ投げて、彼女はまたにこりと笑った。
「それ、失くすとグルッペン凄く怒るからさ」
「…必ず戻って、お前に返す。約束するから」
「……うん。待ってる」
声を上げ、一部隊を引き連れ駆け出したトントンの背中を見送り、彼女は置かれていった彼の剣を握った。その腕は震えていて、それでも彼女の目に諦めの色は浮かばれていない。
「……どうせなら、ぎゅっと抱きしめてもらえばよかったなぁ」
そんな事を零した彼女はその足を踏みしめ、未だ激しさを衰えさせない戦火の中へと消えていった。
私は、最期までトントンの言葉を信じて戦った。怖くて震える腕も、すくむ足も、あの約束があったからこそ無我夢中で動かせたのだ。彼ならきっと、直ぐに戻ってきてくれる。それまで絶対に死んでやるものかと、強く思っていた。
きっと、この長い戦いが終わればまたいつも通り一緒に居られる。朝起きたら隣におはようって笑う彼がいて、気の済むまで抱きしめてくれて。一緒に仕事をして、眠る時には必ず額にキスをしてくれる。
そんな毎日が堪らなく幸せで。
だから、失いたくなんてなかったの。
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夜狐 - んもう好き……() (2021年7月3日 14時) (
レス) id: 587d00a7a2 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - すみれいんさん» すみれいんさん、まさかの周回ありがとうございます…！完結から日の経った今でもこの作品を読んでいただけていることが心の底から嬉しいです…！；；；； (2020年12月27日 1時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - 再び読みにきてもう、やっぱり好きです (2020年12月20日 20時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 宙さん» 宙さん、コメントありがとうございます〜！タイトルの意まで気づいていただけでとっても嬉しいです；；；；最後までありがとうございました！ (2020年9月2日 21時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - 神作。なんて素敵な終わり方なんだあ！題名の意味3か4シリーズぐらいでもしかしてって思ったけど感動したーー！なんて素敵な作品なんだ！！ (2020年8月27日 19時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
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