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そして、再び飛び込んだ異常な光景に目を見開く。前回現れたあの巨大な門が、瓦礫に変わっていたのだ。そしてそんな瓦礫の前に並んでいる自分の愛剣、認識票、切っ先の欠けた誰かの剣。それらも全て、赤々と染められている。
「……いやや、違うって、俺は信じひん、」
立ち上がり、力の入らない足でよたよたと近付く。目の前の光景が、何を指し示すのか。浮かび上がる可能性に違う違う、と子供のように首を振るった。
「信じたく、ない」
もしかして、なんて嫌な可能性から逃げたくて、逃げたくて、仕方がない。
覚悟していた筈だった。全て受け入れて、前を向こうとしていた。Aはいつだって俺の傍にいてくれている。いつものように笑って、そして、「おかえり」と言ってくれる筈なのだ。
"＿＿＿待ってる"
そんな声が聞こえ、はっと顔を上げた。
か細く震えたその声はAのもの。
その言葉は、いつ、聞いたものだっただろうか。
"私、ちゃんと強くなったんだよ。ねえ、信じて"
続けられた言葉が、俺の記憶を深い底から引きずり出した。
脳裏に思い描かれたのは、にっこりと微笑む彼女の姿。しかし、僅かに震えた指できゅっと俺の剣を握っている。黒の軍服は、Aが着ている筈もないもので。
＿＿＿ああ、やっぱり。
Aは俺と共にいてくれていた。
ほんの一瞬の光景を見て、ひとつ確かな答えを得た。それでも湧き上がる不安は底を見せず、ゆっくり、ゆっくりと逃げ続けた俺に真実を突きつけようとする。
Aは何かと戦おうとしていた。怖くて震えている筈なのに、精一杯に笑って俺の背中を押したんだ。
"待ってる"と言った彼女に、俺はあの時何と言ったか。どうしたのか。何が、あったのか。
「……A。やっぱり、怖いわ」
無造作に並べられていた物たちを手元に掻き集め、そして霞の掛かる視界の中で眺め続けた。
愛剣を指先でなぞれば、必死で何かを護ろうとした自分の姿が思い描かれる。
二枚の認識票をすくい上げれば、俺はこれを誰かから託されていたような気がした。
ボロボロに欠けた剣を握ると、これを大切していた、"彼女"を思い出した。
ああ、そうだ。あんなに大切にしていたのに、こんなにも傷んでしまうまで彼女は剣を振り続けたのだ。
それが、何の為だったか。
それを思い出すのは、まだ怖い。
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夜狐 - んもう好き……() (2021年7月3日 14時) (
レス) id: 587d00a7a2 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - すみれいんさん» すみれいんさん、まさかの周回ありがとうございます…！完結から日の経った今でもこの作品を読んでいただけていることが心の底から嬉しいです…！；；；； (2020年12月27日 1時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - 再び読みにきてもう、やっぱり好きです (2020年12月20日 20時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 宙さん» 宙さん、コメントありがとうございます〜！タイトルの意まで気づいていただけでとっても嬉しいです；；；；最後までありがとうございました！ (2020年9月2日 21時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - 神作。なんて素敵な終わり方なんだあ！題名の意味3か4シリーズぐらいでもしかしてって思ったけど感動したーー！なんて素敵な作品なんだ！！ (2020年8月27日 19時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
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