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｢汚い｣
｢……男の部屋なんてこんなもんやろ｣
連れてこられたのは彼の自室らしかった。ベッドの上には脱ぎ捨てられたセーター、テーブルには飲みかけのジュースと高積みの書類、床にも紙が散らばり、ソファーにはゲームのコントローラーが放られている。物はそれほど多くないが、とにかく汚い。
非難の目を向ければ、するするとネクタイを解いていたトントンが少し気まずそうに視線を泳がし、それから私をバスルームへと押し込んだ。流石に片付けるらしい。ピザを食べて大人しく帰れる、とは思っていなかったので扉が閉まると同時に素直に服を脱ぎ捨てた。ちょっと、焦げ臭い。
｢……ながい、一日だったなぁ｣
小雨のようなシャワーを被りながら、ヒリヒリと痛む傷口に滲む涙も洗い流してぼうっと壁に寄りかかる。本当に、人生で一番長い一日だったかもしれない。
唯一の食いぶちだったマフィアの八百長レースは勿論契約破棄されただろうし、街へ行けば首領メイニーの手下たちが血眼で私を探しているはずだ。家には帰れないだろう。夢は結局叶うことなく無茶な仕事を終えて、ここにいる私は死人のような顔をしていて。
｢……ははっ、確かに。ひっどい顔、してるね｣
曇りガラスを拭ってみれば、そこにいた私は本当に情けない顔をしていた。
夢を追ってやって来たロスサントス。ここに来てから私の足はどんどんと常識から遠ざかるばかりだ。ふと、考える。あのまま日本で、鳥籠のような場所で、全ての自由を奪われたまま"あの人"の言う通りに生きていたら、今の私よりずっと幸せになれていただろうか、と。
……いや、変わらない。どっちも同じ、地獄だ。じゃあ私ってどうしたら幸せになれたんだろう。どうしたら自由に生きて、あの大きな夢に縋りつけたんだろう。⎯⎯⎯ハナから無理なんだ。なんて、そんなことを考えたら本当に生きる意味を見失いそうで首を振る。
｢も、わかんないよね。……これから、どうしたらいいんだろ｣
シャワーを止めて、涙を止める。私に残された唯一の希望は、今、せっせと部屋の片付けをしているあの男なのだと思うと頭痛が止まない。助けを求めたところで、どうせ連れられるのは変わらない地獄だ。
バスマットを踏んだ足はふわふわ、感覚が覚束無い。冷たい空気になにも、感じない。死んでいるみたいだ。でも呼吸はしていた。私って、今、どっちにいるの？不安で、不安で、まだ動いている心臓が握り潰されそうなんだ。
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＊→←After the storm comes a calm.
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ぴぷ(プロフ) - Adlerさん» Adlerさん、はじめまして！ｺﾒﾝﾄありがとうございます~！そう言っていただけてとっても嬉しいです！わたしもﾃﾝｼｮﾝﾌﾞﾁ上げで頑張ります！ (2020年10月11日 14時) (
レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
Adler(プロフ) - 初めまして！コメント失礼します！The戦争屋の小説でテンション上がっています！更新頑張ってください！！ (2020年10月11日 11時) (レス) id: 17a3f4fea4 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - レーナ（アンテファン）さん» レーナさん、コメントありがとうございます！面白いと言っていただけてとっても嬉しいです☆ 更新がんばります~！ (2020年10月7日 22時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
レーナ（アンテファン） - 面白い小説を発見☆頑張ってくださいー (2020年10月6日 22時) (レス) id: c89295cbe6 (このIDを非表示/違反報告)
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