八方塞がり ページ2
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｢トントン、消しゴム貸してくれ｣
｢忘れたん？｣
｢なくした｣
蝉の声と教師の声が延々と脳を揺する授業中。振り返り片手を差し出した鷹野に富田林は｢珍しいやん｣とさして驚きのない声で返した。
因みに。鷹野が呼んだ｢トントン｣という名は富田林のあだ名である。早くしろ、と催促する鷹野には｢グルッペン｣というあだ名があった。
｢しゃあないな。ちょい待って｣
富田林―――トントンは苦笑を零し、机に転がしていた消しゴムを手に取った。そうして、何故か消しゴムのカバーをとっぱらった。指先で小さな消しゴムの両端を摘み、ぐぐぐ、と弾力に逆らい折り曲げる。
当然、消しゴムは真ん中で裂けた。ほぼ新品と変わりなかったそれを瞬く間に小さくさせたトントンは片割れをグルッペンの手のひらに乗せる。
｢ほい｣
｢普通消しゴム貸すのに真っ二つにする？｣
｢え？｣
グルッペンから礼の言葉が飛んでくる前に、右隣から呆れたような、驚いたような、そんな声が飛ばされた。トントンは弾かれたように顔を右に向かせ、夏の雲ひとつない蒼天を閉じ込めた瞳が自分を映しているのに気づき声を詰まらせる。
｢や、ごめん。びっくりして思わず声に出ちゃった｣
｢い、いや別に、……｣
｢優しいんだね、トントンくん｣
｢こいつはそういうやつだ。優しいというか、お人好しというか｣
｢ふふ。そうなんだ｣
｢助かった、トントン。借りは後で返す｣
｢……｣
数秒後に黒板をカツカツと鳴らしていた先生が咳払いをし、会話は止むが、それより先にトントンはひとり黙りこくっていた。別段人見知りという訳ではないが、彼女への少しの苦手意識が口を閉じさせたのだ。
手元に残った消しゴムの片割れをノートの上に転がす。初めて菜月さんと目が合った、空色やったな、丸っこかった。なんて、たった一瞬だったというのに脳裏に焼かれた彼女の特徴に感想を浮かばせた。
何となしに左を向けば、カラカラの晴天が目に飛び込む。
(おんなじやな)
だからなんやねん、と脳内で一人芝居を打った。そうして陽射しの眩しさに目を細める。この席は、左も右もやたらと眩しい。ついでに前の金髪も。日陰などなく、何だか居心地の悪さを感じてため息を吐いた。
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餅宮(プロフ) - なるほど、そうですか！こっちの方が味があって好きです(突然の告白)そんな伏線教えてもらえて少し動揺しています(震)これからも更新楽しみにしています！ (2020年7月7日 12時) (
レス) id: 183ec0d7a1 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 餅宮さん» 餅宮さん初めまして！歌はわざとですが理由が著作権にありまして、正直これもアウト寄りかと思いますので修正いたしました…。エモな理由ではありませんでしたが実は音痴であることを伏線としていますのでそれを知った上で今後も楽しんでいただけたら幸いでございます！ (2020年7月6日 18時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
餅宮(プロフ) - 更新お疲れ様です！いつも楽しみにしています。初コメがこんなので申し訳ないのですが歌詞の部分は「この大空に翼をひろげ」ではないでしょうか？わざとでしたらすいません。そうでしたらすごくエモいのですが() (2020年7月6日 15時) (レス) id: 183ec0d7a1 (このIDを非表示/違反報告)
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