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2003年、8月12日。
夏の暑い盛りに生まれたあたし。
23歳の誕生日。
その翌日、事件は起こった。
ガキの頃からの幼馴染が強盗に襲われた。
頭をチェーンカッターで殴られて、意識不明の重体で病院に運ばれて。
「真一郎……」
訳もわからず立ちすくむあたし。
正直な所、助かるかどうか分からない。
頭の中で『死』と言う単語がぐるぐると駆け巡った。
佐野真一郎。
それがあたしの幼馴染の名前。
真一郎を襲ったのは、真一郎の弟の友達だった。
彼らを仮に少年A・Bとして、バイク屋を経営していた真一郎。
少年A・Bは、真一郎の店先に置いてあったバイクを盗みに入ったらしく、そこに運悪く店主の真一郎が現れて……。
少年たちが真一郎の店を選んだのは偶然だった。
たまたま。
たまたま店先に飾ってあったバイクを求めていて。
そのたまたまが、運悪く、こんな悲劇を起こしてしまった。
「A」
「万次郎」
佐野万次郎。
真一郎の弟。
ガキの頃からいつも真一郎にくっついてて、兄貴の背中を追いかけてたクソガキ。
「シンイチローは……」
かすかに震えている万次郎の手。
そんな手をあたしは無言で握った。
かけられる言葉はなかった。
大丈夫、なんて、言いたくてもそんな無責任な事、言える筈がなかった。
二人でずっと、手術室の前から動けなかった。
医者から命は助かったが、脳へのダメージが酷く、このまま植物状態が続くだろうと言われた。
つまり、目を覚ます可能性は低いと言う事。
そりゃ頭を鉄の塊で強く殴られれば、そうなるのが当然だろう。
生きている事が不思議なくらい。
奇跡なくらい。
信じたくはなかったが。
「ひっく……ぐすっ」
手術が終わり、病室へと移された真一郎を前に泣きじゃくるエマの肩を抱く。
エマは真一郎と万次郎の腹違いの妹。
あたしの事を姉と言って慕ってくれている。
「目ぇ覚ませよバカ野郎。可愛い妹、泣かせんな……」
ぽつりと呟いたあたしの声が、真一郎に届いているかどうかは分からない。
あたしはただ、エマの肩を抱いて、背中をさすってやる事しか出来なかった。
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ピアノ - 完結おめでとうございます!もう、真兄推しの私にとったら泣けて最高のお話でした!これからも頑張ってください! (2021年10月10日 10時) (レス) @page49 id: 68f7274f2c (このIDを非表示/違反報告)
ルイにゃ - 完結おめでとうございます とても泣ける話でした (2021年9月29日 18時) (レス) @page49 id: c326ad8a0b (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - 完結おめでとうございます!これまでに無いハッピーエンドです....真一郎くんが起きた時はもう...全私が喜びましたwこの作品に出会えて良かったです^^* (2021年9月29日 3時) (レス) @page49 id: 849fa7e773 (このIDを非表示/違反報告)
ワカメと昆布って似てね? - 完結、おめでとうございます!原作が辛くて辛くて仕方なかったけど、この作品に出会えて本当よかったです!2人の結婚式とか結婚式のスピーチのお話が見たいです!できればでよろしいので書いてもらえたら嬉しいです! (2021年9月28日 22時) (レス) @page49 id: 293adefca4 (このIDを非表示/違反報告)
43(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても面白くて、一気に見ちゃいました!幸せそうな夢主ちゃんを見れてよかったです!! (2021年9月28日 16時) (レス) @page49 id: abf6fd2177 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴんぞろ | 作成日時:2021年9月15日 0時